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決勝まで勝ち上がった俺は、もう優勝したも同然。
それに確実な勝算もあった。
入場すると相手と同じか、それ以上の声援が沸き起こる。
半分以上は黄色い声とやらだろうか。
相手はむさ苦しいファイターと言う名が似合う男だ、女には好かれんだろうな。
2m程あるずっしりとした図体の男に視線を注ぐ。
あちらも同様に睨みを返してくる。
残念ながらこの試合は俺の勝ちだ、それまで貴様はどう足掻いてくる?


「タイウィンさま…?タイウィンさまっ。」
「…、…どうした。」
「タイウィンさまこそ!もしかして調子が悪いのですか?」
「いや、少し昔のことを思い出していただけだ。」
「昔のこと?」
「あぁ、闘技の日のことだ。お前と婚約の約束をした日。」
「…!…………そ、そうでしたか……」
「どうした?思い出したか?…ククッ…そんなに顔を赤くせずとも良いだろう?」
「あ、あの時のタイウィンさまは、凄く強引的でした!」
「ほう?じゃあ、あれ程までに大事にしていたのに、俺の特別な好意に全く気づいていなかった鈍感は誰だったか?」
「それはごめんなさいって!…だって、私は別にスタイルがいい訳でもないし…」
「抱き心地は最高だぞ?」
「もうっ!……もっと男の人好みな女の人もたくさんいるだろうし…それにタイウィンさまがキラキラしてるのが悪いんです!」
「よく分からんが、それはミコが俺に惚れているからだろう?」
「ぐぬ…………」

嘘がつけない可愛いやつめ♡
男好みな女というのは、こういう純粋な愛らしさがない媚びの塊だ。
媚びなど目障りでしかない。
もちろん、ミコの媚びならいくらでも欲しいが。
それも媚びるのに慣れていないのが良いだけであって、あとミコだから特別良いのだ。

「ずっと格好良い人で、おとぎ話の騎士様みたいな素敵な人って憧れだったのに…」
「あぁ、そうだ。ミコだけの騎士ナイトだ。」
「そ、それなのに…あの日…あんな事言われてから、ここに呼ばれるまで…ずっと忘れられなくて…」
「…ほぅ…?」
「こ、告白したタイウィンさまのせいですからねっ。好きって気持ちが止まらなくなっちゃったのは…!」
「はは、そうか!なら安心しろ…計画通りと言ったところだぞ?」
「む……!」
「もっとその気持ちを溢れさせると良い。全部拾ってやる。だから、俺からの想いにも溺れろ。」
「も、もう十分に溺れて…」
「いや、もっとだ。もっと俺だけの可愛いミコになるんだ。」
「…ッッ…!!」

湯気が出そうな程顔をすっかり赤くしている。
鈍感だろうから、知らないだろうな?
お前は産まれた時からずっと俺だけの者なのだということを。
10/10
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