混乱
エルバレン様は毎日、戦争に向けて準備をしている。
タイウィンさまもローマンさんも兵隊達を叱咤激励しては、厳しい訓練を見守る。
私はそんな様子を傍で見守る。
誰かが倒れたら、その人に駆け寄っては治癒を施す。
それをする度にタイウィンさまは、苦い顔をするけれど…許してね。
特別はタイウィンさまだけだから、安心してね。
見守っていると一人蹲っている兵がいた。
慌てて駆け寄って声をかける。

「ミコさん…ッッ!」
「大丈夫ですか?もう少しで休憩ですよ。」
「はいッ…休憩の時に少し診てもらえませんか?」
「はい、分かりました。では、もう少しだけ頑張りましょうね。」

これだけ辛い訓練を重ねていれば、いつしか心折れる人が出始めるのも仕方ない。
その為に私がいて、治癒をしているけれど。

「そろそろ頃合だ。一度休憩を挟む!各自ペア、200回腕立てしてから来い!」
「………」
「さて、ミコ…行くか。」
「はい……後で診療しに離れますね?」
「……分かった、それまでは俺だけの者だぞ。」

相変わらずヤキモチ妬きだなぁ。
隣合って座って、配給をのんびりと食す。
ピリピリとしている訓練、二人でいる時位はのんびりしたいよね。
疎らに腕立てを終わらせて、配給を取りに行く姿をぼんやり見る。
と、頭を撫でられた。
さらさらと指で前髪を掬われる。
お返しに帯をつまめば、その手を拐われて指を絡め合う。
思わず顔が赤くなってしまう。

「またミコの作る物が食べたい…」
「…うん、分かった…またお菓子作るね。」
「あぁ、楽しみにしている。」
「……!…そろそろ診療しに行ってくるね。」

先程お願いされた兵さんがこちらを見ていた事に気がついて、そちらへ向かう。
名残惜しげに指を離して、彼の元へと向かう。
カウンセリングも兼ねているので、人目にあまり着かない場所に移る。

「どうかしましたか…?何でも言ってくださいね。」
「補佐殿!おかしいと思わないのですか?!」
「…?」
「つい数日前まではシュネル様が主君だったと言うのに、エルバレン様が就任して!それはまだ良いとして、どうして二柱がよく似た人に変わるんですか?!」
「あ、あの……つまり…?」
「シュネル様に就いていたタイウィン隊長とローマン隊長はどこに行かれたんですか!?」
「……?」
「ミコさん!本当にどうされたんですか!?貴方の上司はあのような金髪ではなく、銀髪でもっと忠義堅い人ですよ!!」
「…!!!!!!」
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