暗中
彼の言葉でハッとなった。
今までモヤモヤしていた正体が、その一言で導かれる。
そうだ、シュネル様の隣には銀色の髪をなびかせ、剣を捧げた幼馴染本物のタイウィンがいた。
じゃあさっきまで一緒にいて、ドキドキしていた彼は誰…?
……もちろん彼もタイウィン・ヘラッドだ。
あれ…どうして二人もいるの?
同じ名前、同じ顔、あれ、何かがおかしい。
どうして、何が、どういうこと?
私…私は………

「貴様、何をしている。」
「…!!」
「む………お前…ミコに何を言った?」
「ほ、補佐殿!よく見てくださいよ!彼は貴方の慕う隊長殿ではありませんよ!」
「わ、わたし……は……たい、うぃ…さま…ッ…」
「チッ…面倒だな…おい!!お前ら!こいつを捕らえろ!」
「補佐殿!!しっかりしてください!!補佐殿!!」

必死に叫ぶ彼の声が木霊する。
そんな中ゆっくりと暗闇へと誘われ、『お前は俺だけの補佐だ。』と言う言葉に塗り替えられた。


「主君、未だ戯言を吐く残党が残っておりました。」
「そうか!兵力が減るのは惜しいな。しかし、放ってはおけない…殺れ。」
『ハッ!!』
「それと…その者に唆されたせいで、またもやミコが…」
「ふむ…そうか……だけど、僕は諦めないよ。後は君に任せた、君はあの子の『幼馴染』だからね。」
「えぇ、仰る通り…今度は完璧に我々の補佐となれるように、準備致します。」

相変わらず我が主君は、機嫌よく言ったと思えば瞬時に残酷な顔を見せる。
しかしミコを説得しようだとか、無謀な事を考えてくれたおかげで、また一つ団結力が上がった。
置き土産は手痛いが、悪くない結果だ。
俺の部屋で横になっているだろうミコの元へと、早足で向かう。
扉を開ければ、ふわりと甘い香りが胸下から香る。
来るのを待っていたかのように、抱きつかれたらしい。
頭を撫でて宥めながら、扉に鍵をかける。

「どうした?もう起きて大丈夫なのか?」
「…行かないで……どこにも……一人に…しないで…っ。」
「…すまない、少し怖い思いをしていたのか?大丈夫だ、今日はもうずっと一緒だぞ。」
「本当…?」
「あぁ、本当だ。嘘をつくわけがないだろう?」
「…よかった…」

少し涙ぐみながらも、安堵の表情が広がる。
ベッドに座り、膝の上に乗せて顔へキスを降らせる。
不安気な顔はキスをするたびに、恥ずかしげになっていく。
何度目かで、ついに手で制止されてしまった。
さっきまで泣きそうだった顔は、すっかりと俺に夢中になっていた。
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