第二
私が免許を貰ったと聞けば、桜備兄はすぐにお祝いの準備をし始めた。
勉強して努力すれば取れるものだし、一般のものだから誰でも取ろうと思えば取れる。
けれど、自分のことのように喜んでくれる姿に断れきれなくて、その夜はパーティーとなった。
お酒はあまり得意じゃないけれど、羽目を外して一緒に飲み明かす。
火縄もマキちゃんもアイリスちゃんも嬉しそうで、頑張ってよかったとしみじみ思う。
思いっきり飲めと次々に注ぐ桜備兄に火縄が抑制するが、私も酔いが回ってしまって止まらなくなった。
大丈夫、大丈夫って言いながら飲んだことは覚えてるけど……
今朝起きて皆と顔を合わせれば、気まずそうにされた。
桜備兄と会えば慌てて視線を逸らされるし。
昨日、何かした?
確かに暴れ癖はあるかもしれないけど。
桜備兄にどうだった?と聞いても、火縄が教えてくれるとしか答えてくれなかった。
そう言うなら、火縄に聞いてみるしかないかな…

「火縄、昨日の私は何してた?」
「え…あぁ…そうだな…言ってもいいのか迷うな。」
「えぇっ…?!そんなに変な事しちゃったの?!」
「変ではないと思うが……ただ、大隊長に聞いた方がいいと思うぞ。」
「でも、桜備兄は火縄に聞けって。」
「……はぁ…でもこれは俺が話すようなことじゃないんだ。粘ってこい。」
「………」

呆れたようにため息をついた。
やっぱり桜備兄に聞かなきゃだめだ。
火縄が言っていることの意味はいまいち分からないけど…
再び桜備兄に質問攻めする。

「うあ〜…っ!!俺に聞かないでくれよ!」
「火縄の意見は間違いなしだからね!私は桜備兄から絶対に聞くよ!」
「はぁ……もう勘弁してくれ…」

困り果ててしまい、垂れ目が更に垂れてしまっている。
そんなにいいにくいことなら、なおさら教えてほしい。
お酒を飲む時気をつけなきゃいけないから。

「はぁ…まだ言い渋っているんですか?」
「火縄…!」
「男なら、言うのが一番だと思いますが。」
「………しかしなぁ…」
「では、こう言いましょう。所詮酔っぱらいの戯言です、気に悩むことはありません。」
「むっ!確かに酔っぱらいだったけど!」
「そんなに悩むのなら俺が奪っても良いんですよ。」
「な、な、なっ!それはだめだ!」
「なら、早く伝えてあげてください。では、俺はこれで。」

言い合う声が聞こえていたのか、焦れったく思った火縄に説得された。
そのせいもあって少しは言う気になれたらしい。

「早く教えて!」
「………分かった…言うよ…」

照れながら桜備兄が話す昨日のことにだんだん顔が熱くなっていく。
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