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甘えて満足していたミコは、不思議そうにこちらを見る。
私は朝から何を考えているんだ…!
噛み付くようにキスをすれば、驚いて暴れられる。
抑え込むように続けていれば、抵抗するはずの手がしがみつくように添えられていた。
逸る気持ちが落ち着いた所で、解放してやると腰が抜けたらしい。
崩れ落ちるのを咄嗟に支えてやる。

「急に…どう…したの…?」
「君が……私を煽るからだぞ…」
「煽ってるつもりは全くないけど…」
「分かっている…分かってるんだ……」
「…今日はお店開ける日だから、甘々クッキー作ろうか?」
「クッキー…いや…クリームプリンが良い。」
「プリン?良いよ、でも珍しいね。」
「………」

本当に今日の私は…帰ってからの思考が厭らしいものばかりだ。
だらしない奴だと罵られてしまうな…
共に朝食を食べた後は、それぞれ好きに過ごす。
今日も朝のルーティンを怠ることなく、ランニング、筋トレ、素振りのメニューをこなした。
家に戻れば、ちょうど開店前の行列が既に出来上がっていた。
人目にバレないように裏道から部屋へと戻る。
相変わらず、ここの店は賑やかだな。
私もミコの作る菓子は、美味いものだと思う…甘さを除いての話だが。
一般人の味覚に合わせて作られている為に、仕方ないとは思うが私的には理解し難い。
その分、ミコも私と同等の甘党である事は救いになっているが。
たまに補佐官に買い付けを頼む事もあるが、私のイチオシだと知れば客足は増すのだろう。
今でも大変そうな経営ぶりを見ていれば、支援する必要もないな。
笑い合いながら買った紙袋を片手に帰っていく姿に、少し優越感を感じた。
私にだけは作り置きではなく、出来たてが送られるのだ。
買い付けを頼む際に、私の名を出すように言いつけている。
そうすれば、彼女は私専用の激甘クッキーをその都度焼いてくれるのだ。
焼き時間を考慮して、朝に予約をして夕方に取りに行かせる。
そして私は出来たての特製クッキー片手に公務が出来るというわけだ。
紙袋の中に労りのメッセージ付きだということも、好感度が高い。
気がつけば毎週一回は頼んでしまっている始末だ。
昼過ぎまで行列は途切れることなく、全ての商品を売りきったようだ。
残りの並んでいた客たちが肩を落として、踵を返していく。
誰も居なくなり、店側の扉に鍵を掛けられた頃合に店舗へと降りる。
営業終了後は次回日への準備の時間だ。
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