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生地の甘い香りが漂う室内で、生地を捏ねる作業姿を傍で眺める。
全ての生地をオーブンに入れた後、別置きされていたらしい生地を取り出した。
そこへ多量の砂糖、微量の牛乳、適量のシロップが投入された。

「それは私の分か?」
「うん、プリンも甘々なのが良いよね?」
「あぁ、よく分かっているな。」
「カラメルかチョコプリンどっちがいい?」
「…チョコで頼む。」
「はーい。えーと…ミルクチョコのチューブは…っと……」

カラメルも悪くないのだが、火を使うらしい事を思い出し、楽に出来上がる方を選んだ。
チョコ色が馴染むまで投入された後、型に注がれて冷蔵庫へ運ばれる。
その際にチラッと『エド用♡』と書かれた物が見えた気がした。
テキパキと慣れた手つきで調理場を綺麗に掃除していく。

「ふぅ…後は待つだけかな。お腹空いちゃった。」
「私も食べずに待っていた。何を用意すれば良いか聞かず終いだったからな…」
「あっ、確かに忘れてた!でも、今日は作り置きした物だからっ。」
「それなら良いんだが…」
「ハンバーグを焼いたの、これと…ポテトサラダだけでも大丈夫かな?」
「私のことは気にしなくて大丈夫だ。」
「パンはいっぱいあるから、たくさん食べてね…!」

私の事を気にかける気持ちだけでも嬉しいものだ。
それに事前の連絡無しで、用意してもらっている身でもある。
遅めの昼食を食して、もう一度焼き加減を観察しに降りる。
丁寧に焼き加減が調節され、美味さの秘訣を目撃した気分だ。
じっとオーブンを覗き込む姿に近づき、抱きしめる。

「ふえっ!どうしたの?」
「いや……その……」
「もしかしてエドの方が甘えたくて仕方なかったりしてっ!」
「そ、そんなわけないだろう?ミコ以上の甘えたは居ないはずだ。」
「じゃあエド以上に素直じゃない人は居ないねっ。」
「なっ…!そんな事を言い返すようになったのか!」
「ふふっ、図星なんでしょう?お顔が赤いよっ。」
「これは気のせいだ…!!」
「あ、もっと赤くなっちゃった!」
「くっ……」

完全にからかわれているのが気に食わなくなり、首に噛み付く。
ビクッと跳ねた後、しまった!と思い、噛み跡を慰めるように舐める。
そうすると、小刻みに震えながらくすぐったそうな声を漏らし始めた。
やめてくれ…!今、そんな声を出されては我慢が出来なくなる!
止まらない欲情に歯止めを効かせるよう、舐めるのをやめれば、潤んだ瞳で見上げられてしまった。
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