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忍術学園へ続く山道を歩いているなか、ひとつのうどん屋をみつける。
庄左ヱ門は一息つこうとさくらにうどん屋を指さし振り返った。

「さくらさん、少しあそこで休憩しないかい?」
「ええ。そうしましょう」

のれんをくぐるとおや?と庄左ヱ門は先客の顔を見る。見知った顔に彼は顔をほころばせた。

「きり丸?きり丸じゃないか?」「ん?あれ?庄左ヱ門?」
「お知合いですか?」

さくらが後ろからひょっこりとのぞく。すらりと背の高い男性が素うどんを前に席に座っていた。
庄左ヱ門と知り合いらしい彼はにっこりと猫のような笑顔で手を振った。

「なんだよ、女の子連れじゃん。デート中?」
「デートでこんな山道に来るわけないだろ。彼女は仕事のお得意様だよ。失礼だろ、きり丸」
「なあんだ。ども、きり丸です。庄左エ門とは友だちっす」

飄々とした口ぶりとすました表情。さくらはその姿がなんとなく、どこかで感じたことがあるなと思った。
庄左ヱ門はきり丸のとなりへ行き席をあけた。さくらさんここ、と庄左ヱ門は自分の隣を開ける。

「僕たち今から忍術学園に行くんだ。きり丸は?仕事?」
「俺も学園に用がある。不良少年の教育」「なに。その不良少年って」
「1年ボーズの一人に、無茶ばっかりする子がいるんだと。それで俺がなぜか呼ばれたんだよ。こっちは稼ぎ時だってのに…」

ぼやきのような愚痴のような口調できり丸は話す。
「すみません、僕、釜揚げうどん」
「話きけよ!!」
「はいはい。後からね。さくらさんはどうする?」

拗ねてしまったきり丸を横目に注文をする庄左ヱ門。それでも仲の良さそうな様子に、さくらは少し憧れる。
彼女は椿亭に入ってから友人というものがいなかった。ずっと仕事一筋で、周りは年の離れた大人が多かったので友人というより、家族に近い感覚だった。

「…で、庄左ヱ門はその子となんの為に学園に行くんだよ?」
「あぁ、彼女あの椿亭で働く女中なんだ」
「ええ。じゃあ…くのいち!?」
「ははは、いくら椿亭でも女中は普通の人だよ…たぶん」

どうやら椿亭のうわさはかなり広まっているそうだ。忍者が気軽に泊まれる忍者宿。働く者もみな忍者…なんて言われているらしい。
うわさが一人歩きしてそのうちとんでもないことにならないか心配だ。

「彼女、さくらさんはみてのとおり普通の女中さんなんだけど、やっぱり忍者宿にいるなら忍者の事を知らないといけないと思って」
「そこで学園に連れてこうってわけね」
「まあ、それだけじゃないんだけど。じゃあ、一緒に行こうよ」「え?邪魔になんない?」
「…なんの」
「…二人の」

はぁ、と庄左ヱ門はため息をついた。きり丸の言わんとしていることはわかる。しかし彼女はどうひっくり返ったって黒木屋の大事なお客様という関係なのだ。
たしかに自分に浮ついた話もなく、そういう話が好きなきり丸は疑るかもしれないが、自分にそのつもりはないし、彼女だって迷惑な話だ。

そう考える庄左ヱ門は至極冷静だった。常に自分を客観視し正論を導き出す。それが、自分にとって最善の方法なのだ、と。
そう自分に語り、彼は呼吸を整えた。

「なにいってるんだよ。ほら、彼女だって困ってる。僕たちのことはいいから、学園に行こうよ」
「・・・わかったよ。じゃ、さくらさんよろしくな!」
「は、はい・・・」




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