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「こ、ここが、忍術学園・・・」
山道の中に、立派な門構えがそびえ立つ。木札には達筆に「忍者学園」と描いてあった。
「本当にあるんだ・・・忍者の学校・・・」
「じゃ、入ろうか」
そう庄左ヱ門は門を叩く。するとすぐにはあい、という間延びした声がして、門が開いた。
「どなたですかぁって・・・ああ!庄左ヱ門ときり丸くん」
久しぶりだねぇと現れた忍び服の男性。確かに忍者の服を着ているのに・・・なんだろう、全く忍者に見えないなとさくらは思った。
「元気そうで何よりです。小松田さん」
「その子は?」
「さくらさん。僕の炭屋のお得様で、椿亭の女中をしてるんです」
「椿亭・・・あぁ。いま話題の!へぇ〜。はじめまして。僕事務員の小松田といいます」
「あのー僕は学園長先生に呼ばれてきたんですけど」
「そっか〜、じゃあ入門表に名前を書いてください。そのあとご案内しますから」
忍者の学校は入門表に記入すれば入れるのか・・・以外に普通だ、とさくらは心のなかで思う。辺りはまだ授業中だろうか?校庭に生徒は見かけない。
三人は入門表に記名をし、小松田の案内についていく。
「きり丸かの?入ってよいぞ」
そっとふすまを開く。老人が一人、凛と背筋を伸ばし、正座している。
「おお、庄左ヱ門ではないか。おぬしもおったのか」
「はい。この度は学園長先生にこちらの女性、さくらさんとご相談があって参りました」
「よいよい。あとで話を聞こう」
さくらは辺りを何となく見回した。普通の庵室だ。床の間に掛軸があり、花器も花が生けられて美しく・・・
「んんんん!!?」
「どうしたんだい?さくらさん」
「あ、あの、そこの花が生けてある花器のとなりにあるものは・・・?」
学園長はさくらの指差した方を見る。花器をみておお、と声を漏らした。
「これはの、栗衛門の花器じゃ」
「や、やっぱりー!なんでここにうちにおいてある花器が・・・たしか女将さんはふたつとないって・・・」
あわてふためく私をみて庄左ヱ門は学園長に説明する。
「実は彼女は、椿亭で働く女中でして、先日栗衛門の花器が盗まれたそうなのです。さくらさん、もしかしてそれがそうなのかい?」
「は、はい。そのままそっくりです!」
そうかそうか、と笑う学園長。落ち着いた様子で三人を見た。
「じつはこの栗衛門の花器の件で、きり丸を呼んだのじゃよ」
「それで私を?でも、たしか一年生の生徒の教育って聞いてますけど」
その時、カーンという音が聞こえた。そのあとにどこからか子どもたちの声が流れ始める。
「授業がおわったの。くると思うぞ。問題の一年生が」
とっとっと・・・身軽な足音が迫ってくる。三人が入ってきたふすまをスパン、と勢い良く開いて、少年が姿を現した。
「学園長。猪之助、参りました」
「来たか」
猪之助と名乗った少年。まだ真新しい水色の忍び服を着込み深々と頭をさげた。
「・・・この方々は?」
「お前を訪ねてきた者たちじゃ」
「僕を?知らない人ですが・・・」
きょとん、とあどけない表情で三人の大人をみる。おうおう、と寄ってきたのはきり丸だった。
「お前が無茶なことばっかする一年生だな?」
「・・・えっと、あなたは?」
「俺はきり丸だ。この学園の卒業生!」
そういうとはっと再び頭をさげる。
「先輩でしたか。失礼しました。でも。無茶なことって?」
「お前が一人でだまって忍者のいる部屋に忍び込んで物を盗んだってことだよ!」
ああ、と彼はその事を思い出したようだ。しかし、猪之助は、反省した様子がみえなかった。
「だって、僕忍者のたまごですし、それぐらいはします」
「それぐらいは・・・って猪之助はまだ一年生だろ?こういうのは上級生がテストとしてやるもんだ」
きっ!ときり丸が鋭い目付きでにらむ。しかし猪之助はおののかずにらみかえした。
「お言葉ですが、僕はだれよりも忍者になりたいと思ってます!勉強だって真面目にやってるし、実技だって誰にも負けない!上級生の試験も、僕ならできるんです!」
「そういうのは思い上がりって言うんだ。そもそもお前、何を盗んだんだよ」
猪之助はバッと床の間を指差す。
「あそこにある花器です!忍者宿と呼ばれる所で盗んできました!」
「ええ!?君があの花器を!?」
その言葉にだれよりも反応したのはさくら。あぁ、と周りも察したようだった。猪之助はなぜこの女性がこんなに驚いてるのか不思議そうだった。
「この花器!大事なものなんです!かえしてくださーーい!!」
必死なさくらの声が、学園中に響いた。
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