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場所は変わり、ここは忍術学園の食堂。ここに来る前に学園長はこんなことを猪之助に言った。
猪之助、この方たちの言葉を良く聞いて、自分を改めなさい。きっと忍者にとって大切なことがわかるじゃろう
「・・・て学園長先生は仰っていましたが、どういうことですか?忍者にとって大切なことって、なんなんですか?」
机に向かって誰に問うでもなく苛立たしそうにしている猪之助。きり丸は腕をくんで猪之助を見下ろした。
「なんだと思う?」
「それは、命がけで、任務を行うことです」
自分に言い聞かせるように呟く猪之助。
「だって、僕には忍術しかないんです!親が戦争で死んで、一人で生きてきて、忍者になりたいって思ったんです。だから、学園に入ってもだれよりも早く忍者になりたくて・・・」
それを聞いて庄左ヱ門ははっときり丸をみた。
「なるほどね。だからきり丸なのか・・・」
さくらは猪之助を見る。この子は戦争孤児。自分と同じだったのか。その時、またどこかで感じたものが再びさくらにやってきた。そうか・・・これは、自分なのだ、と。
「猪之助。お前が忍者になりたいって気持ちはさ、よくわかるよ。でもお前・・・落ちこぼれだよ」
「そんな!!僕はっ・・・!僕は死ぬのも怖くない!どんな任務だってできるんです!」
「そこが落ちこぼれだってんだ。忍者はな・・・生き抜くんだ」
「え?」
きり丸の言葉に猪之助は意表を突かれたように顔をあげた。
「どんな任務でも絶対に、生きて帰る。これが忍者なんだ。死ぬ覚悟で仕事なんかしないんだ。お前に失うもんがねえっていうなら、お前は誰よりも・・・弱いんだ」
ぽたり、猪之助の頬に涙が伝う。きり丸の言葉に返そうともせず涙も拭こうともせず。黙って涙を流していた。
「僕が・・・だれよりも、弱い・・・」
「強い忍者になりたかったら、友達を作るんだ。大事な人を作ったらお前は誰よりも強くなれる。いつ死んでもいいなんて、もう思うんじゃない」
「猪之助くん・・・」
さくらがそっと猪之助の頬に手拭いを添えた。猪之助がさくらを見上げる。そのまま彼女に抱きついてわんわんと泣き出した。
「猪之助くん、実はね、きり丸も君と同じで、両親を戦争で亡くしてるんだ」
そう、きり丸にも感じたあの感覚は孤独、なのだ。愛する人を失って自分にはなにも残らず、いつ死んでも構わない。そんなひとときの絶望が、きっと彼にもあったのだ。
しばらくしてすっかり泣き止んだ猪之助は風呂敷包みをもって校門の前にやってきた。そこにはさくら、庄左ヱ門、きり丸が待っていた。
「皆さん、今回は僕のためにありがとうございました。これ、椿亭で盗んできた花器・・・さくらさんにお返しします」
「ありがとう!これで皆も安心するわ」
忍者の勉強のつもりで忍術学園にやってきたつもりだが、思いがけず事件も解決したので、心底さくらは胸を撫で下ろす。それに、きり丸を通して忍者というものも少しわかった気がする。
「きり丸先輩、庄左ヱ門先輩、本日は貴重なことを教えていただき、本当にありがとうございました」
「まーな。頑張れよ!」
「僕はなにもしてないけど・・・君ならきっといい忍者になれるよ」
嬉しそうに笑顔を見せる猪之助。その顔にさくらも心が暖かくなる。
「もし、寂しくなったら椿亭に来てね。いつでも歓迎するから」
「うん・・・さくらさんも、ありがとうございました」
三人は門を出ていく。
深々と頭を下げて見送る猪之助。
いろいろあったが無事に事件が解決したことに、さくらは自然と顔が綻ぶのであった。
「転んで花器を割るなよ〜」
「もう!縁起でもないです!」
(さくらさんならやりかねない・・・)
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