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「と、いうわけで無事に椿亭の花器を戻して間宮さんも大喜びなんですよ」
「それはよかったです。ここに来たときのさくらさんの困った顔、すごかったから」
くすくすっと庄左ヱ門は笑う。さくらは翌日、お礼もかねて黒木屋に来ていた。さくらはそっと菓子包みを彼に渡す。
「恥ずかしい・・・。
はい、これ、お気持ちばかりのものですが、お礼です」
「そんな、いいのに・・・」
「間宮さんもとても感謝していましたからこれぐらいさせてください」
「そうかい?気を使ってくれてありがとう。いただくよ」
包みをもらった庄左ヱ門はふと気になっていたことを彼女に投げ掛けた。
「ねぇ、君も今までずっと一人だったのかい?」
思わぬ質問に、さくらは目を丸くした。庄左ヱ門は、彼女の生い立ちは、本人に聞いて知っていた。ずっと一人だったのか、そんな言葉を聞いた庄左ヱ門の顔は心配そうな表情だった。
「・・・いえ、私には椿亭がありました。一人ではありませんでしたから」
「そう・・・ですか」
一人ではない、そういう彼女の姿はとても寂しそうで、やはり孤独なんだ、と庄左ヱ門は思った。だからって自分になにができるわけでもない。なぜ、そんなことを聞くのだろう。庄左ヱ門は自分の言動の意味が理解できなかった。
「もしよかったら、また来てください。忍者のことをもっと知ってもらわなくちゃ」
自分はなぜこんなに彼女のことを気にかけているのだろう。また会いたいと願うのだろう。その気持ちが言葉にできないまま、彼は今日も彼女に炭屋の旦那を演じることにしたのだった。
栗衛門の花器 -完-
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