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翌日、金吾が今日限りで椿亭を辞めるということを間宮に伝えると、間宮はものすごく残念そうにしたあと、小さく「またきてね…」といって承諾した。女中にもあっという間に広がり「やる気が下がるわ〜」とぼやく者が大勢いた。
そうして昼になり、いつものように黒木屋がやってくる。
「や、どう?」「金吾さんが辞めて、皆残念がってました」
「そうか…さくらさんも?」
「うん…お友達、みたいだったから」
金吾とはたしかに仕事仲間だった。年も近く、またお互い事情を知っていたので気の許せる仲だった。
仕事以外で話すことも多く、友だちのような感覚だったといえば、そうかもしれない
「そっか。金吾は気のいいやつだから」「うん…」
庄左ヱ門は悩んでしまう。以前も孤独を感じていた彼女を見ていたので、なんとかよい言葉をかけたいと思うが、それは自分がどういう立場かける言葉なのだろう、と引っかかるのだった。
「僕が…」
そう言いかけてやはり口をつむぐ。やはり、自分に金吾の役割はできないだろう。
「僕がまた、金吾に声、かけとくから。きっとまた会えるさ」
「うん…そうですよね。よし、次はおもてなしできるようにしなきゃ!」
「うん。あ、これ、今日の炭。いつもの場所に置いておくから―」
笑顔をつくろう彼女。それをみていることしかできない自分に、なぜかはがゆさを、庄左ヱ門はその時はじめて感じた。
牢人は忍者 -完-
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