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椿亭の近くにある小さな神社。
こじんまりとした鳥居があり、狐の石像が二つ並ぶ奥に古びた本殿が立っている。

一見人がこなさそうな寂れた神社だが、近頃参拝者が増えている。それも男女でやってくるのだ。

「白浪神社、なにかあったんですか?掃除のとき、よく参拝される方をよく見るのですが」

その神社は白浪神社と呼ばれていた。外の掃除を終え、部屋に戻ったさくらは、女将に何気なく聞くと嬉しそうに答えた。

「知らないの?さくらさん、あの神社はね、縁結びの神社で昔から有名なのよ。良縁や安産祈願なんかでよく恋人や夫婦が参拝に来るのよ」

「へぇ、素敵な所ですねぇ〜」
「でもね、ちょっと不気味な話もあるの」

女将の声音が少し下がる。大きな声じゃ言えないけど、と声を潜めた。

「真夜中にお狐様が現れるって噂があるの。そのお狐様は男性で、妻をめとるため、一人でやって来た女性をさらうっていう・・・」
「・・・ただの作り話ですよね?」

驚かすためなわざと真剣に話しているのだろう。あらわかった?とおどけたように笑う女将。どうやら夜中に神社に来ないように出来た作り話らしい。
 そんな話をしていると、奥から間宮がやってきて、さくらをみつけると数枚の書をわたした。

「さくら、すまんがこの手紙をお得意様の所に渡してくれないか?本当は私が挨拶せねばならないんだか、他の用があっていけないんだ」

「わかりました。今私も手が空いていますし、いってきます」

「少し寄るところが多いが、気をつけていってください」

さくらはその封をまとめ、風呂敷に包んだ。得意先の名簿をもらう。どうやら少し離れた場所もあるようだ。帰る頃には日も暮れているかもしれない。見ていた女将が「明かりはつけとくからね」と一言言った。

「ありがとうございます。では、行ってまいります」

そうしてさくらは、椿亭を後にした。



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