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間宮に頼まれた使いを終え、町に戻ってきたときにはもう辺りは暗く、満月が町を照らしていた。
さくらは早く椿亭に戻らねば女将や間宮が心配すると、早足で歩いていた。
するとどこからかぬるりとした冷たい風が吹いてくる。振り向くと、満月の光も通らないような、真っ暗な白浪神社が目に入る。
(さすがにこの時間はいないか・・・)
そうして再び足を一歩動かした時。「さくらさん」と声がした。
誰かが、自分を呼んだ。女将だろうか?すると白浪神社から、もう一度「さくらさん」と声がした。
「あら、庄左ヱ門さん?」
現れたのはいつもの炭屋の格好をした庄左ヱ門。彼はにこりと笑い、手まねいた。さくらは暗いなか、見慣れた人の顔にほっとして庄左ヱ門に駆け寄った。
「こんな時間に参拝ですか?」
「うん、願い事をしてたんだ」
現実的な考えをする庄左ヱ門も願掛けをしたりするのか、と意外に思うさくら。どんな願い事をしたのかとたずねると彼はうっすらと笑う。
「君に会えるように願ってたよ」
「私に?用があるなら椿亭にいらしたらいいのに。いつもいますから」
「ううん、まだ続きがあるんだ。君を愛してるから・・・ずっと、一緒にいたいんだ・・・」
さぁ行こう、と庄左ヱ門はいつもの笑顔で優しくさくらの手をとる。その手は暖かかった。
「さくら!そこにいるの?」
遠くから女将の声が聞こえる。さくらは振りかえってはい、と答えた。庄左ヱ門の方へなおると、彼は姿を消していた。
「そんな、今ここにいたのに・・・?」
まだ、暖かさが手に残っている。段々怖くなったさくらは走って白浪神社を離れた。
椿亭の明かりがみえる。そこに心配そうに女将が待っていた。
「あぁ、ようやく帰ってきたのね。よかった・・・」
「お、女将さん・・・!」
逃げるように椿亭の中に入り戸を閉めた。女将はどうしたの?と小首をかしげた。
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