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今日は町の市がある日だ。野菜や魚の食材のほかに雑貨、家具、本など、人々が賑わいも見せる日である。それに今日の夜は椿亭の隣の白浪神社のお祭りもあってか、町全体が浮かれているように、さくらは見えた。

しかし、さくらは本日は休みだと言うのに、昨晩の出来事が忘れられず、気分転換にやって来た市も上の空だった。

「はぁ・・・」

そうしていつもの通りに出てきて、しまったと思う。ここは黒木屋のある通りだ。何も考えずここまで来てしまった。今彼と顔を会わせると気まずい。別のところへ行こうとした時だった。

黒木屋から庄左ヱ門が出てきて、さくらと目があったのだった。

「さくらさん!」
「く、くくく黒木屋さん・・・」


彼と顔を会わすなり昨日のことを思い出してしまい、気まずくて声がかけれない。そうとも知らず、庄左ヱ門は彼女に真剣な様子でずいずいとよってくる

「その顔!なんかあったね!?」
「黒木屋さん・・・?昨日のことですが・・・」

恥ずかしながらもさくらは勇気を出してたずねてみようとした。

「昨日・・・僕が何かしたの!?」
「・・・庄左ヱ門さん、覚えてないんですか?」

逆に聞かれてしまい、疑問に思ったさくらは昨日の出来事を説明する。
すると彼は驚き、沈黙。と思うと、鉢屋先輩!と怒鳴って店に戻ってしまった。
すぐに見知らぬ男性が出てくる。とても怒っている庄左ヱ門も一緒だ。

「さくらさん!昨日僕は君には会っていない!会ったのはこの人だと思う!」
「ははは、そんなに怒るなよ庄左ヱ門・・・」

昨日、自分は庄左ヱ門と会っていない?しかし、隣にいる男性の顔も、さくらは知らない。

「この方は僕の学園にいた頃の先輩。化けるのが得意な、鉢屋三郎先輩なんだ」
「ど、どうも、鉢屋三郎です・・・。ずっと庄左ヱ門の格好をして町をうろついていたんだ・・・こんな風に」

彼はひらりと身をひるがえす。もう一度こちらを向くと顔が変わっていた。それは庄左ヱ門そのものだった。

「す、すごい!!見分けがつかない!!」
「確かにすごい先輩なんだけど・・・ねぇ」
「庄左ヱ門、なにか言いたそうだね?」
「いえ、何も」

そういうわけで、と庄左ヱ門は改めてさくらへ向き直る。

「昨日あったことは僕じゃない!君にそんな困るようなこと、言わないよ」
「い、いや、その、私本当に驚いて・・・!夢かと思ったんですけど」

さくらはほっとする。昨日の庄左ヱ門は彼の先輩である変装の達人の鉢屋であったのか、思いきって聞いてしまったが、事実がわかって安心したのだった。
そんなお互いにほっとするさくらと庄左ヱ門を横目に、鉢屋は別のことを考えていた。

「庄左ヱ門、突然だが、私の仕事の手伝いをしてほしい」
「鉢屋先輩の?・・・できる範囲でよければお手伝いしますが?」

ふふふ、とすごく何かを察したような含み笑いを見せている。庄左ヱ門は嫌な予感がした。

「君たち二人で白浪神社の調査に協力してもらえないか?」



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