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さくらはその晩椿亭から少し離れた離れの自室で布団の横で今日の出来事を思い出していた。

「本当にうちの宿が、そんな怖いことをするのかしら」

さくらは昔の事を思い出す。彼女は元は遠く離れた小さな貧しい村の、どこにでもある一家の長女であった。しかし自分が村を離れている間に村は焼かれてしまい、村人は逃げるか、兵士に襲われてしまった。焼かれた家には誰もおらずさくらの家族も行方不明になってしまったのだ。

おそらく皆、兵士に殺されてしまったのだろう。悲しさのなか、完全に焼き払われ村を歩くと、この惨事を知った離れた町からの人々が様子を見にやって来た。

「生存者を探すんだ!」

そう指示を出していた男が一人。とてもきれいな身なりをした男だった。私は呆然としてそれを見ていると目があった。

「おお、いるじゃないか!怪我はないか。怖かっただろう。家族は?」
「みんな、いないんです・・・もう・・・」

なんとかそれだけを答えると涙かポタポタと溢れ出た。男は屈むとさくらをすっぽりと抱き寄せた。

「そうか。君だけでも生きていてよかった。私は遠くの町で宿をやってるんだ。そこにしばらくいなさい。もう大丈夫だから・・・」

その男は椿悟郎と名乗った。遠くの町で小さな椿亭という宿を営んでおり、用事の帰りにこの村をみつけ、その惨事に気づいたのだった。とても優しく、困っているひとを放っておけない人だった。

さくらはその後彼の経営する宿椿亭の女中として、小さいながらも一所懸命働いた。しかし、彼女が15歳になったその時、椿悟郎は肺結核にかかり、その数ヵ月後無くなってしまった。

新しくやって来たのは彼の知人であった間宮という男。椿悟郎の宿仲間の知人らしく、自分の宿を息子に継がせ、そして自分は新しく椿亭の亭主になるという事をしていた。

「間宮さんは、確かに椿悟郎様とは違うタイプだけど、そんな危ないことするかしら?」

間宮は少し守銭奴なところがあるし、商売気も強いがあくどい所は無かった。

「とにかく、それは黒木屋さんが調べてくれるとして、私もしっかり調べなきゃ・・・」

明日から3日間、彼はそれまでに椿屋の正体を暴くと言っていた。そのためにきっといつもの時間に炭を持ってくるのだろう。さくらは、極力自然に振る舞おうとうなずいた。

そこまで考えてふとあくびが出る。明日も朝は早い。そのまま布団に入り、さくらは目を閉じた。



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