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翌日、炭の注文に黒木屋をたずねたさくら。暖簾を潜るといつものように庄左ヱ門、庄二郎が出迎え、その横で鉢屋も彼らの仕事を手伝っていた。

「やぁ、さくらさん。炭の注文だよね。ちょっと待ってね」

「はい」

注文書をとりに庄左ヱ門が奥へと行く。その間に鉢屋がさくらに声をかけた。

「昨日は協力ありがとう。庄左ヱ門から聞いたよ。椿亭も良いところだった」
「そうですか。お仕事のお役にたてたならよかった」
「うん。君のことも色々聞けたしね・・・」「私のこと?私の事を聞いてもなにもないのに?」

意味深な発言をする鉢屋にいったいどんなことを言われたのかと想像する。間宮亭主あたり、色んなことを話してそうだ。でもそれを聞いてどうするのだろう?

「後輩のためにね。まぁいいじゃないか、それより、一昨日の夜、あいつは庄左ヱ門に化けた私に会ったと言っていたが・・・実は私はその日は君にあった覚えが無いんだ」

そっと彼はまわりに聞こえないように声を小さくする。さくらは鉢屋の言ったことを繰り返して考えていた。一昨日の夜、鉢屋さんは自分に会っていない?

「君に会ったのは昨日がはじめてだ。だから私が一昨日君のことを知ってるはずがないんだよ」

「じゃ、じゃぁ一昨日会ったのは・・・」

鉢屋は声を低くして、脅かすように続ける。

「庄左ヱ門本人かはたまた白浪の狐の仕業、か・・・」
「や、やめてください〜!!」

一昨日のことを思い出すだけでも恥ずかしいのに、さらに恐怖まで思い出してしまいさくらは思わず声をあげる。声を聞いてひょっこりと庄左ヱ門は顔を出した。

「あ、鉢屋先輩!さくらさんに変なこと言ってますね?」

そうして彼女と鉢屋の間にはいり、きっ!と鉢屋を見る。はいはい、ごめんよと一言言って鉢屋は庄二郎の元へ行き、手伝いを再開した。

「まったく、人を脅かすのが好きなんだから・・・。さくらさん、あんな人だけどよい先輩だから許してあげてください」

先輩のために真面目に頭を下げる庄左ヱ門らしい姿が可笑しくて、少し笑ってしまう。

「大丈夫です。そうですよね。冗談ですよね・・・」

さくらは先ほど言われた鉢屋の言葉をすっかり忘れてしまうことにした。考えたって仕方ない。

「じゃぁ注文書を書いてもらえるかな?」

そうしていつも通りのやり取りに戻る。その姿を見て、やれやれ、庄左ヱ門は本当に鈍感だな、と人知れずため息を漏らした鉢屋だった。

白浪神社の縁結び -完-



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