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そうして翌朝、一宿一飯の恩義とばかりにまずはさくらと共に朝食の準備をする喜三太だったが。
彼はご飯を炊いては水の量を間違え雑炊にし、魚を焼いては火加減を誤り炭にし、皿を用意してはこけて割るというとんでもないトラブルメーカーだったのだ。
さくらは普段の仕事にさらに喜三太の手違いも挽回せねばならず、普段の倍の仕事をこなしていたのだった。
「喜三太さん…もう何もしないでください…お願いですから」
「本当にごめんなさい」
そんな忙しすぎる朝が終わり、これから泊まるお客への部屋の準備も終えた頃、いつものように裏口へとまわる。喜三太も一緒だ。
裏口の戸を開けるとちょうど庄左ヱ門が台車を引き、こちらへと来ている途中だった。彼はさくらをみつけるなり手を軽くあげた。
「あれ、喜三太?ここにきてたの?」
「やっほー庄左ヱ門!久しぶり」
「うん、久しぶり。元気そうでよかったよ。でも、遠くにいるはずの喜三太がここにいるってことは、何かあったね?さくらさんも巻き込まれてるし」
ハハハ、と乾いた笑いをみせるさくらは完全に図星だった。庄左ヱ門はさらに腕を組んで喜三太をにらむ。
「それに今、大方予想がついたよ。喜三太がなぜここにいるか」「ええ!すごい!さすが庄左ヱ門!」
そうすると彼は袂から一枚の紙を取り出した。その紙にはでかでかと「密書」と書かれている。
それをみてああ!と喜三太は驚く。
「そ、それは!?」「わかるだろう?喜三太…」「も、もしかして…」
「庄左ヱ門も密書を託されたの!?」
だぁー!違うだろ!っと彼は取り乱す。もう一度、ずいと喜三太にその密書をおしつけた。
「庄左ヱ門も、ってことは、やっぱり喜三太、密書を渡されたんだね?」
「う、うん」
「じゃあそれは今どこにあるの?」「そりゃ、いつも懐にしまってて―はれ?」
喜三太は懐に手をやる。彼が託された密書がそこにはあるはずだった。しかし入れたはずの密書が見当たらないのだ。真っ青になる喜三太。
「な、無くしちゃった・・・」
「やっぱり。この密書は僕のじゃないよ。喜三太、君のものだと思う!」
そういって庄左ヱ門は密書を喜三太に返す。涙目の喜三太は庄左ヱ門に頭を下げた。
「ほんとーにありがとう!庄左ヱ門ー!」
「うん。でも大したことないよ。その密書」
へ?と彼は密書をみつめる。これは極秘任務で渡された密書のはず。きっと城の命運を左右させる程の情報がびっしりとかかれているはず。喜三太はそう思い必死でここまでやってきたし、だからこそ敵に狙われていたのだ。
「もしかして、中身見たの!?」
「見た。だって僕も気になるし。そんなに大きく密書!ってかかれたら、誰だって見たがるもんさ」
「そんな〜僕も見てないのに!」
じゃあ見なよ、と庄左ヱ門は事も無げに言う。喜三太は確かに、忍者として、任務に関わるこの密書の内容はすごく気になるが・・・
「勝手にみたら僕、怒られちゃうよ」
「じゃあ、直接関係ない僕が読む。かしてごらん?」
おとなしく密書を渡す喜三太。いや渡しちゃ駄目でしょ、というツッコミがさくらは喉まででかかった。
「じゃあ読むよ?『建長汁の作り方。とうふ、ごぼう、こんにゃく、さといも、にんじんをそれぞれ切り、鍋にいれてごま油で軽く炒める。そこでだし汁、しょうゆ、みりん、酒をいれてアクをとりながら強火で煮たったあと、10分ほど弱火にして煮こんだら、刻みネギをかけて完成。本書を届けた忍者、喜三太はこれをふるまいます』以上」
喜三太とさくらは庄左ヱ門の冷静に読み上げた内容に唖然とする。
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