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オウギタケ城の門を叩く。しばらくすると鎧を着込み、槍を持った備兵がやってきた。

「すみません。私は相模から参りました、山村喜三太ともうします。本日はわが里の命によりオウギタケ城へ参りました」

「山村・・・喜三太どの?おお、話には聞いておる。中へ入られよ・・・おや、そちらの女性の方は?」
「今回の忍務で、一人女中を呼びました。私の同行人です」
「・・・こんにちは」
「わかりました。お入りください」

忍者とはよく話すが、兵士と話すことなどそうないさくらはその気迫に少し引いてしまう。慣れている様子の喜三太にくっついて歩いた。

「その方、もしや山村喜三太どのでは?」

城内へ入ると、忍び服姿の男が喜三太の方へ向かってきた。喜三太も顔を知らないようでへ?と首をかしげる。

「そうですが、あなたは?」
「私はオウギタケ忍者の赤虎と申します。昨日の夜、喜三太どのと同じ城の者から書を預かりました」

庄左ヱ門の言った通りだ、とさくらと喜三太は思った。きっと昨日来た忍者が本物の密書を届けに来たのだろう。しかし、赤虎と名乗った男の表情は暗かった。

「まことに心配されていた。なぜなら昨日来た忍者は囮と聞いていたので。本来なら喜三太どのが先にくる手筈であったと・・・」

「ん?僕が先に?」「?」

思わず喜三太は赤虎に聞き返した。赤虎は不思議そうな喜三太をみてどうされました?と聞いてきた。

「いや、私が囮だと思ったもので・・・その、密書の内容が、建長汁の作り方だったので。ほら」
「まさしくそれはオウギタケ忍者への密書!我々はそれをお待ちしていました!」

頭が追い付いて行かない。さくらと喜三太がなんで?と顔を見合わす。
それを察した赤虎は理由を話し出した。

「オウギタケ城は相模の風魔とも繋がりがあり、現在も名門山村家の長をされているリリー様とも交流がありました」
「風魔の里のリリーばあちゃん?」

風魔とは忍者の流派のことらしく、その里はオウギタケ城とも繋がりがあり、リリーと言う名の人とも、喜三太は知り合いのようだ。

「はい。リリー様はオウギタケ城に相模の郷土料理である度々建長汁を振る舞いたいとおっしゃっておりました。しかし相模は遠い場所。来るのは大変です。そこでリリー様と信頼関係のある、優秀な喜三太どのに建長汁の作り方を教えていただくために、密書を送られたのです」

「あの、密書じゃなくても・・・いいのでは?」

さくらはそう呟いたが、赤虎は大真面目な顔で、我々も忍者ですから!と訳のわからない理由を押し通した。

「それにしても名門の長と繋がりがあるなんて喜三太さん、すごいですね。納得の腕前です」

やっぱり頼りになりますね!とさくらが言うと照れた喜三太はまんざらでもなさそうに答えた。

「僕もやればできるから・・・!なーんて!大したことないよ!僕、おっちょこちょいだし。でもそうだったんだ、これが本当の密書だったんだー!」

嬉しそうに密書を掲げる喜三太。自分が責任重大(かはわからないが)の仕事を任されたこと、それを無事に達成できたことを喜んでいた。


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