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「とにかく、見たこともない者の事を今考えても仕方ないな。今日は僕達が警備して夜を明かそう」

「わかった」
「わ、私もなにかしたいのだけど・・・」

さくらはおずおずと三人に聞いてみる。庄左ヱ門ははぁ、と重いため息をついた。さくらには庄左ヱ門のそのそぶりが迷惑なのかもしれない、と不安にさせた。

「君はさっき危ない目にあっただろう?もうあんなのは絶対駄目だ。今後は余計なことはしないこと」

「庄左ヱ門、ちょっとその言い方少しきついんじゃないか?さくらさんは仁地寺のためにやってくれたんだぞ?」

団蔵の言葉に考えた庄左ヱ門。すると少しうつむいてごめん、と呟いた。

「僕、取り乱してたみたい。・・・でも君には危ない目にあってほしくない。お願いだから今夜は大人しくしてほしいんだ」

さくらはここまで自分を心配してくれる庄左ヱ門に申し訳なく思った。彼女は小さく頷いた。

「わかりました。今夜はここにいます」

「じゃあこの部屋は庄左ヱ門が見張っててくれよ。俺と乱太郎で和尚さんや寺の警備をするから、ほら、行くぞ乱太郎」

団蔵が乱暴にぽけっとしていた乱太郎の腕をひっぱりどたどたとその部屋を出た。
二人きりになったさくらと庄左ヱ門。重い沈黙が続いた。
先に口を開いたのは庄左ヱ門だった。

「本当に心配したんだ・・・団蔵が来なかったらどうしてたんだろうって・・・」

「ごめんなさい、迷惑をかけて・・・でも私、覚悟してるから大丈夫です」

庄左ヱ門はその言葉に眉間にシワを寄せた。そしてずいずいとさくらの正面に向かい合い座る。彼には怒りと悲しさとの気持ちが入り雑じっていた。

「迷惑とかじゃない。君にとって僕はただの他人かもしれない。でも、僕はもう、そう思ってないんだと思う」

庄左ヱ門は拳を固く握る。行き場のない気持ちを押さえるようにゆっくりと。

「君は一人じゃないんだ。そんな覚悟なんて、しないで欲しい・・・」

その言葉を聞いてさくらの心はざわついた。そして、昔椿悟郎に言われた言葉を思い出した。一緒に過ごした頃、彼にも同じことを言われた思い出があったのだ。
 
「庄、左ヱ門さん・・・」

悟郎が亡くなった後は悲しくて悲しくて、再び孤独になった気持ちになっていた。その気持ちを打ち消すようにさくらは椿亭に意地になって居続けていた。庄左ヱ門の言葉で彼女はそんな自分に、今気がついたのだ。

「・・・ごめんなさい。私、今まで自棄になってたみたい。庄左ヱ門さんが、そういうならちゃんとしないといけないわね」

「いや・・・僕も、わがままだったかも。でもさくらさんは何事も忍者に巻き込まれやすいし。これからは何かあったら僕に相談してほしい」

必ず僕が守るから、と庄左ヱ門はまっすぐにさくらを見つめる。さくらはなんだかその視線が恥ずかしくて、ぎこちなく視線を外した。なんだか妙に意識してしまう。

「え、ええっと・・・じゃあ私は皆さんのお言葉に甘えて休みますから・・・その・・・」

「あぁ、お休みなさい」

庄左ヱ門は立ち上がり、部屋を後にする。一人きりになった部屋でさくらは安心とは別に高鳴るなにかに戸惑っていた。これは、悟郎と居たときでも感じたことのない感情だった。

(明日から私、普通でいられるのかしら・・・)

どうしてそう思うのかもわからないまま、落ち着くまでしばらく、さくらはその場に座り込んでいた。



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