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「じゃあ、満足したし僕は帰るよ」
「はい。まことにありがとうございました」

間宮は兵太夫の雇い金を払う。それを受け取った兵太夫は荷物を持ち上げ、椿亭の正面の門を出ようとした。

「やっぱり兵太夫さんも城務めなんですか?」
「・・・知りたいの?でも内緒〜」

兵太夫は無邪気に答えるとさくらの頭をわしわしと手をやった。せっかく整えた髪の毛がくしゃくしゃになる。

「また泊まりに来るからさ。じゃーね〜」

そのまま門を出ていく兵太夫。さくらはその背中を最後まで見送った。忍者の世界は厳しいと聞く。彼はあのように言ったが、出会いは一期一会だろう。

「そういえば、おもちゃ箱のお礼してなかったわ・・・」

「あ、あれは兵太夫じゃないか」

後ろから聞き慣れた声がする。振り返ると得意先に炭を運び終え空になった台車をひいてやって来た庄左ヱ門が近づいてきた。

「庄左ヱ門さん、あの方を知ってるんですか?」
「うん。学園時代の同級生。椿亭に泊まりに来てたのか」
「庄左ヱ門さんのお友だちかぁ・・・」

さくらは微笑む。兵太夫とはまた会えるような気がする。その時はきちんとお礼をしよう。
椿亭から悲鳴が聞こえてきた。からくりの間は、さっそく注目されたらしい。それを聞いた庄左ヱ門は丸い目をきょとんとさせていた。

「あのね、庄左ヱ門さん、椿亭に面白い部屋があるんだけど―」

椿亭は、今日も忍者宿として賑わいを見せていた−。


椿亭の思い出箱 -完-

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