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「それで、僕の元に来たってわけか・・・」

庄左ヱ門は居間で正座をしたまま腕を組む。目の前にはさくらと三治郎が向かい合っていた。

椿亭で三治郎の事情を聞いたさくらは、自分では解決しかねると思い庄左ヱ門に相談しに来たのだった。

「庄左ヱ門、てっきり京にいるかと思ってたのに、この辺りにお店出してたなんてしらなかったよー。すごい久しぶり〜!」
「三治郎は卒業してから、消息が不明だったからね。は組は皆心配してたよ?」
「あはは、山伏してると山にこもってばっかだから・・・」

やっぱりというか、薄々さくらは勘づいていたが庄左ヱ門と三治郎は学園の同級生らしい。

庄左ヱ門は改めて三治郎が引き受けた指示の紙を見直す。

「それにしても、自分の正体も明かさず仕事だけを三治郎に投げるなんて、不気味な忍者だな」

「うん。僕もそう思う。でも僕はフリーの忍者だから基本来た仕事はなんでもやっちゃったりして・・・」

チラリ、と気まずそうに三治郎は庄左ヱ門をみた。庄左ヱ門は眉間にシワを寄せて三治郎を見た。

「三治郎、そのやり方変えた方がいいよ。だから仕事の取り組み方に悩んじゃったんじゃない?」

庄左ヱ門の鋭い指摘に露骨に落ち込み言い返せない三治郎。まあまあ、とさくらは三治郎を励ます。

「きっと三治郎のそのやり方に目をつけて相手もこの任務を頼んだんだと思う!あと、相手の事をなにも知らないっていったけど、ひとつ分かることがある!」

丸い瞳をきらりと光らせ庄左ヱ門は断言する。

「ひとつわかること?」
「うん、三治郎は事情を説明するとき忍者からこの紙をもらったって言ったね?」

三治郎は庄左ヱ門の言わんとしている事がなにか考える。あっと隣にいるさくらが声をあげた。

「相手は忍者ってことですか?」
「その通り。兵でも役人でもない、忍者が三治郎に仕事を頼んだ。問題はその忍者が何者なのか、あとはこの「椿亭の女中をさらえ」という指示もひっかかるな。忍者と椿亭の女中・・・か」

さくらは女中の顔を一人一人思い出す。最近入ってきた女中はいないし、皆何か隠し事をしている風でもない。いつもと変わらない仕事をしているはず。女中で忍者と関わりを持つ者なんて・・・

「忍者と関わりのある女中、君ぐらいしか浮かばないんだけど」
「え・・・えぇ!?私!?」

さくらはぶんぶんと首を振る。自分はそんな怪しい忍者と関わったことはない。庄左ヱ門にそういうと彼は極めて冷静に答えた。

「君を疑う訳じゃない。多分だけど、相手もよくわかってないんじゃないかな。この指示書には具体的な女中の特徴は書いてないから、つまり椿亭の女中なら誰でもいいんだ」

「不気味な忍者は椿亭の女中の情報を欲しがってるってことか・・・女中なら誰でもいいなら、相手の事を探るにはちょうどいいかも」

庄左ヱ門と三治郎は互いをみつめあう。さくらはその会話の意図する事がわからず、首をかしげていた。その時、こんにちはと居間に入ってくる者がいた。

「こんにちは〜。庄左ヱ門、近くに寄ったから来たよ」

それはこちらの事情を何も知らない乱太郎だった。庄左ヱ門と三治郎は黙ってお互いにこくりとうなずきあう。乱太郎は様子のおかしい二人をみてとっさに嫌な予感がした。

「乱太郎・・・来てもらって悪いんだけど、少しお願いがあるんだ―」



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