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「ひどいよ・・・みんなひどい・・・いきなりこんな姿にして・・・」

めそめそと落ち込んでいるのは椿亭の女中の格好をした乱太郎。元はさくらが来ていた作業着だ。

「似合ってるよ乱太郎!助かったよ〜」

乱太郎が傷心しているにも関わらず笑顔で感謝する三治郎。

二人は三治郎に任務を与えた相手がどんな忍者なのかを探るため、囮の女中を作ることにした。そこで偶然やって来た乱太郎を女中にしようと無理やり女装させられたのだった。しかも捕らえたという設定なので縄で拘束している。

「ごめんなさい。乱太郎さん・・・」

あまりに落ち込んでいるので思わず謝るさくら。乱太郎はそんなさくらをみてこれではいけないと、気持ちを切り替えようとした。

「いや!いいんだよ。君が変な忍者に襲われる方が大変だし、私ならいざとなればどうにかなるし!!」
「さすが乱太郎!頼りにしてるよ」

「庄左ヱ門、三治郎!二人はもっとためらってよ!」

そんな話をしながら三人は霊山がそびえ立つ山道の入り口までやって来た。山伏姿の三治郎は錫杖を地面に立てて庄左ヱ門をみた。

「庄左ヱ門とさくらさんは隠れながらついてきて。乱太郎は僕と一緒にこの先の待ち合わせ場所に行こう」
「わかった」

そうして別れて三治郎と乱太郎は山を登る。しばらく上り、小さな清流が側にあるところで立ち止まった。二人はだまってその場に立ち尽くす。離れた所で庄左ヱ門とさくらは息を潜め様子を見ていた。

すると清流の岩の影から音もなく濃茶色の忍び服の姿をした男が現れた。

「女中を連れてきたか。山伏の忍者、夢前三治郎。お前に仕事を頼んだのは俺だ」
「・・・これがその椿亭の女中だよ」

三治郎は乱太郎を前に出す。男は黙って乱太郎を見て二言、質問した。

「女中、お前は白浪神社に行ったことはあるか?」
「・・・行ったことはありません」
「では他の女中で白浪神社に来たものはいるか?」
「わかりません。私は仕事で忙しいので・・・」

乱太郎は様子を伺うようにしながら言葉を選び、答えた。
その問いをして、そうか、と男は言った。そして静かに忍び刀を出すのだった。それをみて驚く三治郎と乱太郎。

「何をする気だ!?」
「我々は暗殺者として、顔や情報を知られると困るのでな・・・用がすんだ二人にはここで消えてもらう!」

「危ない乱太郎!」

男は乱太郎に切りかかろうとして来た。とっさに三治郎が持っていた拘束縄を思い切り引っ張るとその力に乱太郎は茂みに吹っ飛んでしまう。

「どしぇーー!」

「しまった力を振りすぎちゃった。ごめん乱太郎〜」
「乱太郎・・・?やつは男か!?」
「そーゆーこと!」

三治郎が答えるとすかさず縄を捨て、男の懐に入り、急所に錫杖を突く。その力にのけぞり男はうめきよろめく。

「うう、なかなかやるな山伏・・・俺もここで死ぬわけにはいかんでな!」

男は手に小さな筒を取り出し口火に火をつけた。それを三治郎に投げつける。爆発音と共に辺りに煙が立ち込めた。

「うわ!鳥の子か!」
「三治郎!」「大丈夫だよ。庄左ヱ門。どうやら逃げられたみたいだ」

しばらくすると煙が収まる。煙が晴れると草の茂みに突っ込んだままの乱太郎の足が見えた。庄左ヱ門とさくらが三治郎の元へと寄る。

「危ないところだったな」
「うん。やっぱりとんでもない奴だったよ。仕事を押し付けといてその相手を殺そうだなんて・・・」
「あの人、確か自分の事を暗殺者だっていってたな」
「暗殺者・・・そんな人に女中が狙われてるなんて」

うーん、と考え込む三人。しかしその場ですぐに答えはでなさそうだった。すると茂みの方から泣きそうな乱太郎の声が聞こえた。

「みんな・・・助けてよ〜!!」

その声に気づいた三人はごめんごめんと乱太郎の足を乱暴に引っ張った。乱太郎は泥や木の枝や葉っぱでぼろぼろになっていた。

「三治郎〜!」
「ごめん!でも死なずに済んだだろ」
「もー!って怒りたいところだけど。これでよかったかも。さくらさんだったらどうなってたかわからないし」

さくらはその言葉にゾッとする。椿亭の女中を暗殺者が狙っているかもしれない。庄左ヱ門はさくらの隣で黙って考えていた。そしてうなずいた。

「とりあえず、町に戻ろう。もう夕方になるし、山にいるのは危ない」

「そうだね」

さくらは乱太郎を繋いでいた縄を外す。四人はそのまま山を降りることにした。

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