6
その日の夜、さくらがすべての仕事を終え、湯から上がって部屋で一息ついた時だった。こつん、とふすまから音がした。風で揺れたのかと思ったがまた、こつん、と音がして気になったさくらはふすまを開けた。
夜風がふわりと入り込む。さくらは辺りを見渡す。小さな声が草の茂みから聞こえてきた。
「私です。黒木屋です」
音もなく庄左ヱ門は姿を表す。黒装束に身を包んでおりさくらはいつもと違う彼の姿に戸惑った。
「黒木屋さん・・・?その格好は?」
「忍び装束だよ。例の計画、うまくいったようだ」「え?わかるのですか?」
「あぁ、変装して椿亭に忍び込んでいたら、明日、間宮さんとササタケ城の忍者が密会を開く情報を手に入れたんだ。やっぱり二人は繋がっていたみたいだ。」
椿亭は炭をササタケ城に渡せなくなりササタケ城は椿亭がササタケを裏切り、仲の悪いオウギタケに寝返ろうとしている、という二つの情報がすでに回り、混乱を招いているようだ。この二人が密会をする、その様子をもし誰かにみられたら・・・間宮は言い逃れを出来ないだろう。
「明日、君を迎えに行くよ」
庄左ヱ門の言葉にさくらはなぜ?と小首をかしげる。
「だって、僕が見たって忍者だとわかれば意味がない。椿亭に勤める 君がみてこそ間宮は困るんじゃないか」
「そ、そうなのね。なんかドキドキしてきました」
「大丈夫。なにかあったら僕が守りますから」
どきり、庄左ヱ門の言葉にさくらは心が浮わついた。多分そのままの意味だろうというのに、変な意味にとらえてしまうのだ。
「あ、ありがとうございます」
「きっとやつらは客も女中も寝静まった時間に落ち合うと思う。その時また会おう」
「わかりました。寝ずに待っています」
じゃ、と庄左ヱ門はその場から立ち去る。あっという間に闇にとけて消えてしまった。
「大丈夫、黒木屋さんがいるから・・・」
まさか自分が大事にまきこまれるなんて。緊張してしまうが、彼と一緒にいる時間は嫌いではない。
さくらははっとその不思議な気持ちに驚いた。
「なんなのかしら。この気持ち・・・」
その答えを知る前に、もう寝てしまおう。そうやって考えるのをやめ、さくらは自室にもどり、そっとふすまを閉めた。
- 6 -
*前次#
一覧に戻る
ページ: