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「庄左ヱ門さんといると変に意識して、うまく話せなくなって・・・私・・・彼の前でありのままでいれる伊澄さんが羨ましくて」
段々と見えてきた自分の心。一つ一つもやを取り除いていくと、一つの気持ちが浮かび上がる。
「私ももっと庄左ヱ門さんの事知りたいんだわ・・・もっと知って彼の一番に、なりたいのかも・・・」
はじめて沸き起こる独占欲にも近い感情。それはどろどろした欲望とは似ても違う。自分は彼と一緒にいたいのだ。それが当たり前になるように、自分の一部になるほどに彼の事を知りたい。そんな未来があったら、自分は本当の幸せに、なるのかもしれない。
虎若はそれだよ!とさくらに言った。
「その気持ちを庄左ヱ門に伝えた方がいい!」
その言葉を聞いてさくらはさらに頬を赤らめる。こんな気持ちを持つのもはじめてで、さらにこの恥ずかしい気持ちを打ち明けろと虎若は言うのだ。
「きっと迷惑になるわ。伊澄さんもいるんだし」
「庄左ヱ門は伊澄となんの関係もないし、迷惑とかそんな風に思わないと思う。むしろ、言わなきゃずっとこのまんまだ!憧れとか、恋とか、そーゆー気持ちを押さえる事って結構きついんだぜ?」
虎若は熱を込めて語る。この気持ちを庄左ヱ門に伝えてもいいのか。自分の気持ちに気づいたさくらは、今後他の人にもこんな気持ちを抱くことはあるのかと想像したが、それはやはり庄左ヱ門以外には想像出来なかった。
ドキドキする気持ちを押さえようとそっと懐に手をやるといつもしまっているお守りがそこにあった。縁結びの白波神社で彼にもらったとても大事なもの。さくらは決心した。
「虎子さん、私、今夜気持ちを伝えてみます!」
「さくらさん!よーし僕、応援してるから!!」
自分の気持ちに気づくとぼんやりしていた心も一気にはれやかになった。彼に気持ちを伝えにいこう。その気持ちを完全に受け入れてもらえなくてもいい、自分の気持ちを素直に彼に伝え、人を好きになった気持ちに感謝を伝えたいのだ。
さくらは虎若に頭を下げすっと立ち上がる。彼にお礼を言って部屋を出ようとした時だった。慌てた走る間宮が戸を勢いよくひいた。
彼はとても動揺していた
「ここにいたんだね!大変だ、さくら、君の部屋に空き巣が入った!」
「空き巣・・・泥棒?!」
さくらは間宮と虎若とともにさくらの自室へと急ぐ。半開きになっている戸を開けるといつも片付けているはずの部屋が散らかっていた。筆記用具はあちこちに散らばり、棚はすべて光られており、押し入れまで空いて布団が散らばっている。
一歩中に入るさくらは愕然とした。
「ただ、不思議なことに貴重品は盗まれてないようなんだよ。ほらここに君の金銭袋があるだろう?」
棚の上に置いておいた財布も床に転がっている。泥棒なら真っ先に狙いそうなものだが、とさくらはとられてあるものがないかと見てみたが、貴重品はすべてあった。
「一体なにが目的で・・・」
虎若は黙ってその様子を見ていた。
「とにかく、他の女中にも伝えてきます。盗難にあってないのは幸いでした」
そういって間宮は小走りでその場を離れていった。虎若は改めて辺りを見回す。
というのも虎若にはおおよそわかっていた。この空き巣の目的は彼女であると。奴等は間違いなくさくらのあれを狙っているのだ。そう考えていると今度は軽い足音がして、伊澄がやって来た。
「間宮さんに聞いたよ!空き巣だって?大丈夫?襲われなかった?」
「はい。私は虎子さんと別の部屋にいたから・・・」
それを聞いてほっと胸を撫で下ろす伊助。
「この部屋の片付けば自分でやるので、虎子さんも伊澄さんも、心配ご無用ですよ」
そういってさくらは二人を部屋から出す。部屋から出された二人はさくらに聞こえないように部屋から離れて歩きながらこそこそと話す。
「・・・間違いない。あの男達がさくらさんのお守りを狙って部屋に入ったんだ」
「そのお守りに入ってる指令書を取り返すためにやつらも必死だな」
でも、と伊助は首をかしげる。
「そんな大切な指令書が入ったお守りをなんで一般人のさくらさんが持ってるんだろう・・・それがずっとわかんないんだよね」
「さぁ?とりあえず僕は男達を監視するから、伊助は庄左ヱ門にこのことを・・・」
「わかってる」
伊助と虎若は頷きあう。さくらが知らない間、大変な出来事が始まろうとしていた。
-幸せのご利益 前編 完-
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