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「え、えっと・・・庄左ヱ門さんって、伊澄さんと仲いいなぁって思ったんだけど」
「うん。昔はずっと一緒にいたから」
「通じ合っててうらやましいなぁ・・・なんて思ってしまって・・・」
うらやましい?と庄左ヱ門は首をかしげた。自分にとって伊助の存在は当たり前だったので伊助との関係をうらやましいという言葉にしっくり来なかったのだ。
「私、椿亭にいてもなんか寂しくて・・・自分のことを考えてくれる相手なんて、いないとばっかり思ってたけど・・・仁地寺で庄左ヱ門さんが言ってくれたことが、すごく嬉しかったの」
「仁地寺で僕が言ったこと?・・・あっ」
ごめん、と彼は頭を下げる。庄左ヱ門はあのとき彼女に責めるような事を言ってしまった覚えがある。その事だと思ったのだ。
「違いますよ。その後の言葉です。私は一人じゃないって、庄左ヱ門さんが言ってくれたの」
「あぁ・・・あのときのか」
さくらは仁地寺での事を思い出す。孤独を感じる夜、そっとその事を思い出すことが多かった。そのたびに庄左ヱ門の存在は大きくなっていったのだ。
「そんなこと言ってくれたのは、悟郎さんだけだったから。すごく嬉しくて・・・あの・・・それで・・・えっと」
その先がうまく言えなくてさくらはどもってしまう。恥ずかしさで庄左ヱ門の顔が見れない。
「その気持ちはほんとだよ。僕の好きな人が命を粗末にする姿を見るのは絶対嫌だから」
「いやあの時はほんとに反省して・・・ん?」
言いかけてさくらは庄左ヱ門の言葉を聞いてとどまる。さっき彼はさらりとすごいことを言ったような気がする。ぶんっと庄左ヱ門の方へ顔を向けた。彼はいつもの平然とした表情だった。
「今なんて言いました?」
「好きな人が、命を粗末にするのは嫌だっていったの。君のことだよ」
「ええ!本当ですか!?」
予想外の言葉に驚くさくら。すると彼はするりと自分の手を拘束していた縄を解いた。
庄左ヱ門にとってはここを抜け出すことは造作もないことだったのだ。しかし彼はすぐに脱出せず、さくらの縄をほどいてその場に座ったままさくらに向かいあった。
「本当。君は僕の気持ち、迷惑?」
庄左ヱ門はまっすぐとした瞳でさくらを見つめ、答えを待つ。さくらはというとまさか庄左ヱ門に自分の気持ちと一緒のことを考えていたのかと嬉しさに心地が浮いてしまう。
「今日庄左ヱ門さんに、おんなじこと伝えようと思ってたんです。えっと…嬉しいです」
「ありがとう。なんか今恥ずかしくなってきたな。そうと決まればここをでないとな」
返事を聞いてから照れてきた庄左ヱ門。ふと視線を離した。その時どかどかと暗殺忍者達が慌てて降りてくる。庄左ヱ門をみて開いたお守りをふたつ彼に押し付けた。
「おい!お前からもらったお守り、中に何も入ってなかったぞ!!て縄がほどけてる!?」
「だから言ったじゃないか。普通のお守りだって」
「馬鹿な確かにドクタケはお前たちに売ったのだと思っていたが・・・」
薄ら笑いを浮かべる庄左ヱ門。指令がわからないままだと彼らは仕事ができない。
「君たちの探してる紙はこれじゃない?」
懐から一枚の紙を取り出す。二人はその紙を素早く奪い取る。
「お前勝手にお守りを開けて・・・これがまさしく我々の求めた指令書だ!」
あっと庄左ヱ門が言いかけたが二人はそれを開き松明を近づけ読み上げた。
”指令 忍者宿椿亭に一週間奉公せよ”
「・・・えっ?」
きょとんとする二人。暗殺忍者である二人に頼んだ仕事にしては平凡な指令に、呆然と何度も読み直していた。信じられないと豪雷は崩れた。
「そんな…俺たちはこんな指令のためにこの町を駆け回っていたのか・・・」
読み上げた豪雷がぷるぷると震えながらその紙を握る。暗殺者としてのプライドも傷つきなにか気持ちも折れてしまっていたようだった。瞬雷は隣でのんきな様子。
「金はもう貰っちゃってますし、この指令の言う通りにするしかないですね〜兄貴」
ということは、と豪雷は呟く。
「俺たちがこの指令を達成するためにはお前達をここで消すと不審に思われて、いかんということだ。まことに納得できないが・・・」
ため息をついた豪雷に瞬雷も肩を叩く。どうやらその紙の通り指令を行うつもりらしい。
「暗殺者のプロとして椿亭で1週間奉公しましょ」
「はぁ、俺この仕事変えようかな。あ、そういうわけだから…お前達にもう用はない…あばよ」
そういってととぼとぼと地下室をでていく暗殺忍者達。その姿は暗闇のなかでも哀愁が漂っていた。
完全に姿を消した後、庄左ヱ門は息を漏らした。すべては彼の計画通りだったのだ。
「ふう。うまくいったな」「?…どういうことですか?」
さくらが訪ねると庄左ヱ門はもう一枚、同じように小さく畳んだ紙を取り出した。
「あの二人はお守りのなかに絶対に指令書があると確信していた。しかし入っておらず慌てた二人は、僕が何気なく出した「紙」を指令書だと思い込んだんだ」
しかし二人に渡した紙は指令書などではなく、庄左ヱ門が勝手に書いた文書。紙に意識がいっていた二人はそれが本当の指令書だと思い込んでしまったと言うわけだ。それは庄左ヱ門がすべて計画したことだった。
「お守りをおとしたことに気づかないぐらいだ。この作戦で行けると思ったんだけど、本当にうまくいくとは・・・」
そんでもってと、取り出した本物の司令書を庄左ヱ門はさくらにみせる。その内容にさくらは首をかしげた。書かれていた内容はこのようなものだった。
”実りの秋!ドクタケ わくわくきのこ鍋祭りのお知らせ
裏裏山できのこ狩りをしてみんなできのこ鍋パーティーを行います。 ドクタケの皆様振るってご参加ください!!”
以下日時が記載されている。そう、これはどうみてもきのこ鍋パーティの周知案内の紙だった。
「たぶんドクタケ忍者のことだから、暗殺の指令書と間違えてきのこ鍋パーティの案内書を入れたんだと思う。どっちにしろ、あの二人の本当の指令書は手に入らなかったわけ」
あまりのアホさ加減に庄左ヱ門はあきれてそのまま紙を戻した。そしてさくらの手をとり、にこりと笑った。
「じゃあ、神社に出ようか」
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