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外に出ると真上に月がのぼり、白浪神社にも月光が差し照らしていた。雲一つない夜空に陰ることもない夜空だ。こもっていた地下の空気から秋の夜の冷たい空気が胸にはいる。庄左ヱ門は頭巾をとってその顔をさくらにむける。
「少し話ししよう」
白浪神社の本堂の賽銭前の階段で庄左ヱ門は腰かけた。さくらも隣に座る。
忍び姿の庄左ヱ門は椿亭が忍者宿になった時以来見ていなかった。さくらは忍者と言う存在をまだあまり深く知らない。彼が普段どんな風に忍者の仕事をして暮らしているかも知らないのだ。
そんなことを思いながら庄左ヱ門をみつめているとふいに彼はさくらに振り返った。
「僕は神様頼みとか、おまじないとか・・・あんまり本気にしない方だけど、こうやっていろんな忍者にであって、僕たちが一緒にいるのはやっぱりこの町を司る白浪神社のおかげなのかなって思ったよ」
「そういえば、お祭りの時、庄左ヱ門さんはなにをお願いしたんですか?」
白波神社と言われた思い出した何気なくさくらが聞いてみると庄左ヱ門は少し照れた様子でぎこちなく答えた。
「…来年も、さくらさんと来れますように」
庄左ヱ門は思う。あの時から自分はすでにさくらが愛しかったのだと。だが、それを伊助に言われるまでまったく気持ちが理解できなかった。鈍感だと言われても言い返せない。
改めて庄左ヱ門はさくらに向き直る。
「もう一度、君に言うよ。もう君を一人にしない。ずっと一緒にいてほしい。来年も、何年たっても隣には君がいてほしい」
庄左ヱ門さん、と呼ぼうとしてさくらは一瞬息が止まる。そっと包むように庄左ヱ門が優しくさくらを抱き締めた。
しかしその間は少しだけ。すぐに暖かい温もりは離れて先程よりも近い距離で庄左ヱ門は微笑んだ。
「愛してる」
さくらの家族が亡くなり、一人になったときから長らく聞いていなかった言葉。その言葉を聞いてさくらは静かに涙を流した。
「私も…私も愛しています。庄左ヱ門さん」
庄左ヱ門は手拭いをだしそっとさくらの頬を撫でる。そのとき暗殺忍者が置いていった白浪神社のお守りが彼の膝に落ちた。
それをさくらは手にして微笑む。お守りは無造作に開けられたままだった。
「縁結びの幸せのご利益、かな?」
お守りを持つ手の冷たくなった指先の手を庄左ヱ門は両手で包む。
「そろそろ帰ろう」
そしてそのまま、手を繋いで町を歩いた。
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