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「えぇ!?伊澄さん、男性だったんですか!?」
事件から数日後、買い物ついでに炭を頼もうと、女中の伊助と虎若の二人で黒木屋の店に寄ったときだった。
庄左ヱ門が伊澄や虎子のことをしきりに伊助、虎若と呼ぶので何故かと聞いてみると
「あぁ、伊澄と虎子は男なんだ。本名は伊助と虎若」
「騙しててごめーん!」
というわけだ。伊澄の撫子のような上品な振る舞い、長年働く女中も舌を巻く仕事ぶりをする伊澄が男性だったなんて…さくらはショックをうけた。
「おいっ!僕のことは驚かないのかよっ!」
伊助の隣にいた虎若が聞いてきたがさくらは虎若はむしろ女性であることが信じられないといつも思っていたので
「あぁ、やっぱり…って思いましたので驚いてません」
「ええ?!そうかな…。結構うまく言ってたと思ったのに」
庄左ヱ門と伊助も虎若の言葉に苦笑いする。ふと、さくらは庄左ヱ門に聞いておきたいことがあった。
「そういえば、私が神社で攫われたこと、どうして庄左ヱ門さんはわかったんですか?」
「それは、ササタケ忍者の金剛さんとオウギタケ忍者の赤虎さんに聞いたんだ」
あの二人に?と疑問が浮かぶ。ササタケとオウギタケは仲が悪く、牽制しあっていたが、なぜ一緒にいるのだろう。
それを察した虎若が事実を話す。
「最近、この辺りをドクタケが調査してたんだよ。奴らはササタケとオウギタケを手中に収めようとしてね。それを敵視したササタケとオウギタケは一時休戦、同盟を組もうとして忍者隊の頭どうしが椿亭で密会してたってわけ」
「それで私の姿をみたんですね。でもまだわからないわ…どうして助けてくれたのかしら」
その問いに答えたのは庄左ヱ門。
帳簿を片手に注文書類を集めながら話す。
「それはね、君に恩返しがまわって来たってこと」
「恩返し?なんのことかしら」
「金剛は仁地寺で助けてもらったこと、赤虎さんは城でご飯を振る舞ったこと…君の行いが巡り巡ったんだ。本当にあの二人には感謝してる。はい、伊助、この注文書にサインして」
さらさらと伊助はその注文書に名前を書く。金もその場で払い終えて用事は完了。
「それで…あの「元」暗殺忍者の二人はしっかりやってる?」
「豪雷さんと瞬雷さん?」
あの日から庄左ヱ門の偽った指令通り、二人は一所懸命に生き生きと椿亭で仕事をしている。すでに一週間は過ぎ、指令期間も終わっているというのに二人は椿亭を去ろうとしなかった。更に言うと、二人はあの指令書が偽物だとすでに気づいている。
ある日、さくらが椿亭の食事処を掃除していると大量の布団を干し終わった豪雷が重々しくに話しかけてきた。さくらはついにバレたか!とひやひやしていると、彼は笑顔で感謝してきた。
「おい、女中…!この仕事を紹介してくれて感謝している!俺たちこの仕事が肌に合うみたいだ。あの男の指令書は偽物だって気づいてるんだけどな、もうあれは気にするな。椿亭の世話人忍者として、これからは頑張るぜ」
「え、え?」
そのまま肩をぽんと叩き、上機嫌で去っていく。そんな出来事があった。
「ついに本物の忍者が椿亭の仲間になったのかぁ…。まぁあの二人ちょっと間抜けで向いてなげだったし、結果的に良かったんじゃない?」
ぼんやりと適当に庄左ヱ門が言う。そのきっかけを作ったのはその庄左ヱ門、彼によってなのだが…
「ま、そーゆーわけで、安心して僕らも働いてるってわけ。でももう心配することもないし、僕たちも女中をやめるつもりだから」
その言葉にさくらは少し寂しさを感じたが、前のように孤独は感じなかった。きっと彼らとまた会える日があるはずだと、さくらは確信していた。
「じゃ、僕たちは先に椿亭に帰るから、じゃね」
「あ、まってよ虎若ー僕も行くよ」
なぜかそそくさと二人は黒木屋を出ていく。庄左ヱ門がため息をついた。
「はぁ。変な気をつかうなよな…」
「あはは」
「…でもちょうどよかったさくらさん」
大事な話があるんだ。と彼はさくらを見つめた。一体なんだろうか。その真剣な眼差しにみとれながら、さくらは耳を傾けた。
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