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さくらは空いた客室の清掃を行っていた。紙くずは捨て、干しておいた布団をまるめ、押し入れに戻す。散らかった道具類はすべてもとに戻した。

ここは上得意様のみが使う部屋。なので一際広く、他の部屋と違い床の間もあり、かの有名な栗衛門の花器が・・・ない。

「え?・・・ない???」

さっと彼女は顔を青ざめた。宿の備品が、なくなっている。

「嘘・・・そんな」

何度も辺りを見回わす。入れた布団をもう一度出してみたりして、何度も隅々まで探したが・・・ない。

「大変・・・女将さんに・・・間宮さんに伝えなきゃ!」

慌ててさくらは女将のいる部屋へ向かう。ちょうど部屋から出てきてこちらへ向かうようだった女将はさくらの慌てようにあらあら、どうしたの、と声をかけた。

「上得意様の泊まられる椿の間にある花器が・・・ないんです!!」
「まぁ!あれはたしか栗衛門の名作の花器だったわね?大変です・・・間宮様にお伝えしましょう」

そういうわけで女将と二人で間宮の元へと向かう。彼は帳簿をつけている最中だったようで、筆を走らせていた。

「間宮様、栗衛門の花器が盗難にあいました」

その一言で、間宮の筆が泊まる。そしてふるふると震えだした。

「なんっ・・・ですと」
「栗衛門の花器が盗難にあいました」

がたり!と間宮はおもむろに立ち上がる。さくらと同じように真っ青な顔をしていた。

「二度も言わなくてよい!あれは、世にふたつとない名品・・・お客様の心を癒せればと飾ったものだったが・・・まさか奪われるとは」
「まことに、残念です」

しばらく考えていた間宮。うむ、と一言言うと彼はさくらに向かって言った。

「さくら!君は忍者の知り合いがいるでしょう?」
「え?ま、まぁ。知り合いですが・・・」
「おそらく犯人も忍者・・・あの作品を栗衛門と見抜ける眼を持つものに違いありません。さくら、その知り合いの忍者に犯人探しをお願いしてください!」

んな無茶な!という一言を飲み込む。今の間宮に言葉は通じなさそうだ。そもそも忍者は探偵ではないような気がするが・・・。

自分の知り合いの忍者・・・というと頭に庄左ヱ門の笑顔が浮かぶ。彼なら相談くらいはできそうだ。さくらはダメもとですが・・・と間宮の命令に頷いた。



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