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「というわけで・・・今わかるところはその「あたらよ峠」って所が怪しい。ほらこの地図にも、ちょっと遠いけど忍術学園の南の方にあるところだよ」
図書室に戻って三人は地図と日誌を見比べる。すみれはその言葉を聞いて改めてはたと思った。その言葉にすみれは聞き覚えがあったのだ。
「・・・あたらよ峠、あたらよ・・・可惜夜城のことかな?」
「可惜夜城?」
まったく心当たりのない二人はすみれを見る。すみれはまだ源四郎の弟子になって間もない頃、共にその可惜夜城へいったことがある。城主は大変骨董集めに凝っていて刀から茶器など、求めてくることがあった。よいものに金のいとめはつけない性格で、周りの側近も困り果てていた様子であった。それを怪士丸と平太に伝えると、二人は再び悩み始める。
「城になってるとなると、探しにくいなぁ・・・この日誌の「神降りし岩」っていう場所がわからない訳だし」
「うちにある骨董品を見せに行くのはどうかな?可惜夜城のお殿様はかなりの骨董マニアだし、ひょっとすると中にいれてくれるかも」
いわくつきだけど、とすみれは最後に付け加える。平太は城の中に入るということですこし躊躇いを見せた。
「僕たちお子さまが来ても、門前払いされるかもしれないよ・・・?」
平太の不安な様子にすみれが肩をぽんと叩く。そしていつもの元気一杯の笑顔を見せた。
「平太くん大丈夫!私、よく大人と骨董の交渉したりするからやりとりには負けないわ!任せて!」
はつらつとして輝くすみれの自信満々な笑顔に平太も怪士丸も目を細くする。
「うう・・・!眩しい」
「すみれさん、頼もしいね・・・」
やるだけの事はやってみようと決めた三人。次の休みに早朝で可惜夜峠にいくことにした。
そうして数日後、まだ朝日もでないうすら暗い時刻、忍術学園の校門の前で平太と怪士丸はすみれがやって来るのを待っていた。彼女は大きな箱を持ち、ゆっくりと二人のもとへやってくる。
「お待たせ!」
「その背中の荷物が骨董?」
怪士丸の言葉にすみれは頷く。刀の装飾品から茶器など、そこそこ上等で、もちろんいわくつきの物を運んできたのだ。
「すみれちゃん・・・重いだろうしぼくが運ぶよ・・・」
平太がそう言うと彼女は意外そうに平太をみた。
「平太くんに持てるかなぁ」
そういって平太に荷物をもたせると彼は軽々と持ち上げた。怪士丸は彼がいつも重いものを運ぶ用具委員だと知っていたので別段驚かなかった。
「わぁ、力持ちなんだね〜平太くん」
「・・・そこまでじゃないけど、これぐらいなら・・・大丈夫だから・・・」
ほんの少し微笑む平太。彼女の役に立てる事が嬉しかった。
「じゃぁ、可惜夜城へいこう。すみれさんは道、わかる?」
「んーと、地図を見ながら、大体は思い出せると思う」
三人は忍術学園の南側に回り道を進んでいく。長い平坦な道を過ぎると途中に川があり、橋がかかっている。そこを渡ると遠くに城がうっすらと見えた。
「あれが可惜夜城かな?」
「だったと思うんだけど・・・」
城の近くまで来てみる。門を前にすみれが声をかけた。
「すみません。骨董屋の川村堂です。骨董、いかがですか〜」
するとすぐに門番の兵士が出てきて、彼女たちを見るなり怪訝な顔をした。
「なんだ子供だけじゃないか・・・ここは遊び場じゃない。帰った帰った」
兵士はやはりしっしと手を払う仕草をして追い返そうとする。すみれは動じず、その場を動かなかった。
「私は川村堂の川村源四郎の弟子のすみれと申します。師匠の源四郎がこちらの可惜夜城城主ともご贔屓にしておりまして、この度とても珍しい品を仕入れたのでこのように参った次第です」
「殿がご贔屓にしてた骨董屋・・・?追い返したら怒るかなぁ・・・骨董に目がないお方だし・・・」
兵士が迷っている。それをみてしめたと思ったすみれは一歩引き下がった。
「お断りしますなら、うちは別の城との取引もありますのでそちらへ行きます・・・またとない良い品をもって参りましたが残念です・・・」
踵を返し立ち去ろうとすると兵士が慌てて引き留める。
「わっ!贔屓の骨董屋を返したとあらば殿がお怒りになられます!ご案内しますのでこちらへお入りください」
三人は顔を見合わす。なんとか城には入ることができた。
三人はそのまま城主のもとへと通される。男は成人にしては小柄で、目付きは鋭く、顎髭を細く伸ばしていた。城主はすみれ見る。
「本当に子どもだけのようだな。川村源四郎どのには何度か良い品をいただいている。なにせ私は骨董に目がないのでな・・・どれ、なにを持ってきた?」
すみれは平太から荷物を受け取り、それを開いた。取り出したのは黄金で作られ、虎が掘られてある刀の鍔のみ、だった。
「これはかの有名なタガネ師、地円が作り出した刀の鍔です。今にも吠えるような虎の様子が素晴らしく、地円の中でも名作と呼ばれております」
といっても確かに名作には違いないが、刀にその鍔をつけると室町の巨匠といわれる刀職人、地円の魂が宿り斬るものによって柄が抜けなくなると言われている品だ。
「そしてこれは観音菩薩像。東野明皇のもので鎌倉の世にできた名作で・・・」
「ふふふ・・・それもいわくつきかな?」
可惜夜城の城主は不適な笑みを浮かべ一言そう言った。すみれは突然の城主の言葉にはっとして黙る。
「私が知らないとでもおもったかな?川村堂の事は聞いている。曰く付きのガラクタばかり取り扱っているとな・・・」
「ガラクタじゃありません。鑑定した上等な品を集めております」
「しかし曰く付きではガラクタも同然だ・・・お前たち何か用があってきたのだろう?本当は何が目的だ?」
城主が立ち上がると兵士が入ってくる。まずい、と三人は思ったが時すでに遅し。囲まれてしまい身動きが取れない。
「この可惜夜城城主の目はそう簡単に欺けんぞ。兵士!ガキどもをしばらく牢にいれろ!どうやらただの子どもではないぞ、用心しろ!」
三人は囲まれそのまま牢まで連れていかれてしまう。兵士につれられていくその道の途中、平太は社を見つけた。城の中に社があるという珍しさにふと目をやったが、兵士に早く行けとはやされすぐにその場を去っていった。
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