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「?」

突然骨抜きになってしまった城主を三人はおや、と覗きこむ。かれはその場から動けないぐらい力が抜けてしまっているらしい。恐る恐る近づいてみたが城主が起き上がる様子はない。三人は城主を囲み彼を見下げる。

「どうしちゃったんだろ?刀を構えた瞬間に変わったね」

すみれがしゃがんで相手をみると城主は地面に突っ伏してそのまま動かない。気の抜けた声が城主から発せられる。その声に三人は首か傾げた。

「た、たふけてくれー」
「なんで斬らないの・・・?」

怪士丸の影に隠れながら平太がそう訪ねると城主はだるそうに顔を上げた。

「わからぬ・・・刀を持った瞬間力が・・・抜けて・・・」
「ふーん?」

すみれがさっと刀を持ち上げる。その力はなくらするりと男の手から抜けたと思うと、男は夢から覚めたように起き上がる。

「お前たちを・・・捕らえるぞ・・・」

寝ぼけ眼の瞳で城主は三人を睨んだ。すみれはもしやと思いその刀をみた。そして城主をみてにやりとする。

「はい。どーぞ」
「あぁ、力が〜」

すみれは城主に刀を持たせると再びのびてしまう。その様子をみてすみれは確信した。

「この刀、妖刀ってやつかもしれないよ」
「よ、ようとう?こわいよ・・・」

すみれの隣にいた平太はその刀をみてきゅっと縮こまる。大丈夫だよ、とすみれは平太に笑顔を向けた。

「妖刀でも、物騒じゃないよ。持つと戦意を無くしてだらけちゃう平和な刀みたい」
「つまりこれもいわくつきってわけだね」

その言葉を聞いて城主とすみれはため息をつく。城主は刀が手から離れず意気消沈をして、すみれはまた見つけた骨董が曰く付きと知ってしまってだった。

「な、なんと恐ろしい刀だぁ・・・こんなものはいらん・・・お前らにやるから、助けてくれぇ」

ついに可惜夜城の城主が観念して助けを求めてくる。その言葉を聞いた三人は冷たいほど落ち着いていた。

「どうする?」
「刀をとったらまた襲いかかりそうじゃない?」
「うん・・・」

そんな三人の会話を聞いて城主は涙目に頭を下げる。相当懲りているようだ。

「頼む〜。この刀をお前たちが引き取ってくれたら逃がすから・・・」

その言葉に怪士丸はどうする?と二人に投げ掛けた。すみれは刀さえ手にはいれば師匠に誉められる訳であるし、平太も怪士丸も日誌の謎も解ける。お互いに顔を会わせて頷く。すみれがそっと城主に近づきその刀を取り上げた。

みるみるうちに骨抜きにされた城主の意識が戻っていく。きりっとした顔つきで何事もなかったようにすっと立ち上がり三人を鋭く見やる。

「お前たち・・・城主の私が刀でふにゃふにゃになったことを周りに多言するでないぞ」

そんな取り繕う彼を余所にすみれが刀を鞘に戻し箱の中へ収め元通りにする。その時、箱の底に一枚の紙があった。それにふと目がいく。

「あの、もう遅いと思いますぅ・・・」

平太がおどおどと社の出口を指差すと何人かの兵士がこちらをずっと見ていて笑いを堪えている。ぶんと城主が睨むと彼らは堪えきらず大笑いを始めた。

「貴様ら〜!城主を笑うなー!!」
「申し訳ありません〜!」

わっと城主が兵士の元へ駆け寄ると蜘蛛の子を散らすように兵士が逃げていく。監視の目がなくなった三人はその様子をみて今のうちに城を出ようと社を出る。すみれもそれに合わせて急いで箱を包み、担いで着いていった。

三人は急いで城を出て忍術学園の近くの林まで来た。軽く息をあらげてすみれは地面にへたりつく。それをみた平太が心配になってすみれの傍へいく。

「大丈夫?すみれちゃん」
「うん・・・ちょっと疲れただけ」

その場に座り込み肩で息をするすみれの姿をみて、平太の胸は痛む。自分がもっとしっかりして強い男子であれば彼女を抱えて駆けることができたのに、と自分の不甲斐なさに落ち込み俯いてしまう。
その落ち込んだ平太をみてすみれがなんでもないようににこりと笑顔を繕う。

「大丈夫!平太くん。追っ手はこないよ」

すみれは追っ手が来るかもと怯えているかもしれない平太を安心させようとした。その優しさも、平太にはわかりなおさら胸がいたい。それを見て察した怪士丸が平太を肘でつんつんとつつく。その感触にはっと平太が顔をあげた。怪士丸がしっかりしろと平太の意識を呼び戻したのだ。

「すみれちゃん。か、刀、僕が持つよ。立てる?」

平太は置かれた刀を担ぎ、手を差しのべる。すみれは平太の顔を見上げる。差し出された手をすみれは繋いだ。

「平太くん、ありがと・・・」

はにかむようなすみれの笑顔に平太は心が暖かくなる。彼女にはずっと笑っていてほしい。そんな感覚が平太の頭に浮かんだ。それは今までもあったことですぐに消えず、思うほど強くなるのだった。

もっと強くなろう──。平太は繋いだその手を強く握りしめ、すみれに合わせて怪士丸と小さく歩き出すのだった。

 


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