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百人斬り日誌の一見が解決して数日がたった。いつもの勉強を終えた忍術学園の放課後。今日は午前のみの授業らしく、忍術学園は静かなように見えた。
そんな平穏な学舎にすみれは校門から入門表を小松田に渡し学園へとやってくる。今日は源四郎に忍術学園の学園長へ改めて事態の収束がついたことへの手紙と手土産をもって使いにやって来たのだった。
「うーんやっぱり広いとこだからまよっちゃう。小松田さんに聞けばよかったな」
引き戻して小松田に場所を聞こうと踵を返した時、その先に背の高く目付きの鋭い男がやってくる。平太などの年の近いものでもなく、かといって教員のような大人でもない。その鋭い視線にすみれは少し怯えた。その男はすみれの近くへとやって来て、彼女とおなじ視線になるように屈み、ふっと優しい笑みを向けた。
「どうした?女の子が学園に用事か?くのいち教室の子でもないようだが・・・」
「す、すみません・・・わたし骨董屋の川村堂の使いです・・・。が、学園長先生に文をとどけにきただけですからっ・・・」
「川村堂?・・・そういえば最近おなじ用具委員の平太に聞いたな・・・と、こっちに来るようだ」
「食満先輩〜!」
ぱたぱたと走る足音が聞こえて食満と呼ばれた男が振り返る。すみれもみるとそこにはなぜか半泣きの平太がこちらに走ってきていた。
平太は食満のそばまで寄ると彼の制服をぐっとつかんだ。
「僕を用具倉庫に一人にしないでください!寒くて暗くて怖くて・・・ってあれ?すみれちゃん?あぅ・・・」
すみれが来ているとしるととっさに涙をぬぐう平太。その姿をみておや?と食満はおもった。いつもなら怖がって泣きつく平太がこの少女の前では一生懸命気丈を保とうとしている。初めてみた後輩の一面に、意外だとおもった。
「ど、どうしたの?すみれちゃん。またなにかあった?」
「ううん。この前の日誌の報告とお礼をしにきたの。今日は師匠お仕事だからわたしが変わりにその文をとどけに来たら・・・この人が・・・」
じっと食満をみるすみれ。平太はその視線の意味をなんだととらえたのかはっとしてすみれと食満の間に入り立ちはだかった。彼の足は心なしかぷるぷると震えている。
「いっ、いくら食満先輩でもすみれちゃんはダメですからっ・・・!!」
その言葉に食満はおもわずずっこける。
「おいおいっ!どういう見方をしたんだ平太!俺はその子が迷子になっていたみたいだから声をかけただけだ」
へっ?と平太はすみれと食満の顔を交互にみてなんだと息をついた。その姿をみてすみれは平太に声をかける。
「わたし、学園長先生にお会いしたいの。平太くん場所、教えてもらえる?」
「・・・うん。僕が案内するよ!では食満先輩、ぼくちょっと委員会からはなれますね・・・」
「あ、ああ・・・」
平太はすみれに頼られたことがなにげに嬉しい。そしていつものように彼女の手を握り、平太は学園長の庵まですみれを案内するために歩き始める。その頼もしい背中姿を食満は黙って見送った。
あの臆病で引っ込み思案な平太が一人の普通の少女とあんなに仲良くしている姿をみて、彼はふとおもった。
”さては平太、あの子のことが好きなんだな”
一般的な男というのは女性の前では見栄を張りたがるものだ。平太ぐらいの年でもそれはかわらないと食満はなぜかしみじみと感じていた。そしてもしかしたら彼女をきっかけに平太も成長できるのではないかとおもったのだ。
「すみれちゃんか・・・覚えておこう」
平穏な忍術学園。変わり始めた少年の気持ちにどうなるかと淡い楽しみを抱きながら食満は再び歩き始めた。
百人斬り日誌 ―完―
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