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「私は長年O城の殿に仕える年寄り侍の浜野です。先日、この町でお忍びで来ておりましたらこの店にあったある軍配団扇がずいぶんと立派なものでしたので、殿が気に入り、わたしが小三郎どのに頼んで金をわたし、お取り置きをお願いしました。その後O城はB城と同盟を結び、今朝殿と相手の城主が会ったときこの軍配団扇を献上の品ということで渡してきたのです」
その見覚えのある作風にO城の殿と側近の浜野は驚き、疑問を持った城主は浜野に軍配団扇を持たせ、ここまで来たというわけだ。すると自分を偽った忍者が取り置きしておいた必勝といわれる軍配団扇を奪われた。これは恐らくB城の策略に間違いないだろうと浜野は思った。
すみれは浜野に獅子が描かれたこの軍配団扇が小三郎の作り出した「必敗の団扇」であること、そして奪われた団扇が「必勝の団扇」であることを説明するとようやくわかったと浜野は深くうなずいた。
「B城は同盟を組んでおきながら、影ではO城が必ず敗けるように縁起をかけたという訳ですな。ということは今にもやつらは我々に戦をしかけるかもしれません」
「えぇ!戦なんて・・・」
物騒な言葉にたじろぐすみれ。平太と伏木蔵はいたって冷静だった。なぜなら彼らはいずれは戦にもかかわる忍者のたまご。戦がどんなものかは学んできているのだ。
「B城は人を騙し意表をつく姑息な手段が多いことで有名だ。平和的なO城と同盟を組むと聞いたときは意外だと思ったが、変な手をつかうものだ。縁起物に頼ってO城を出し抜くなんて・・・」
「でもその縁起、川村堂が扱うほどの品ですからぁ・・・バカにできないかもしれませんよ」
ぽろりとでた平太の発言にすみれはじとっと睨む。
「平太くん、うちをそんな風にみてたのっ?」
「ひぇ、ちがうよ。悪気があっていってるんじゃないよ・・・」
ぴゃっとびくついた平太は伏木蔵のそばに隠れる。伏木蔵は平太もなかなかスリリングな事言うね、とぼやいていた。
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