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「でも浜野さんどうするの?負ける団扇を送りつけて勝つ団扇を奪っちゃう悪いお城なんて仲良くできるの?」
すみれの問いに浜野の表情はかえず、むしろにこりと笑って答えた。
その笑みを見て子どもたちは首をかしげる。
「するわけなかろう。団扇を盗んだのは間違いなくB城じゃろう。でも今はまだ同盟を結んでおる」
すみれはすぐにでもB城との関係を切って戦を始めるつもりだと思っていた。しかし、浜野はそう思っていないらしい。すると伏木蔵がおそるおそる手をあげた。
「同盟を利用して裏を暴くんですね?」
「おぉ、鋭いな」
伏木蔵の読みに感心する浜野。彼は先程からとてもワクワクしているようで、浜野に案があると言った。
「僕、いいこと思い付いたよ!」
「い、いいこと?」
伏木蔵の発想は見かけによらずけっこう大胆だ。怖いことは極力したくない平太はすみれの隣で身を縮めながらためらいがちに聞き返した。
「さっき、竹細工屋さんにこんなものがあったんだ」
伏木蔵が取り出したのは町に来る途中に寄った竹細工屋で購入した竹の水鉄砲。竹筒の底に小さな穴が空いており、今は栓がされている。そこに水を入れて取っ手を取り付け押し込めば水鉄砲になる。水を使うおもちゃのひとつだ。
「水鉄砲?これをどうするの?」
「戦ごっこをするんだよ」
にたり、と伏木蔵が笑う。なるほど、と利吉と浜野が頷いた。
「同盟を結んだイベントとしてこの水鉄砲を使った戦ごっこで賭けをするんだよ。勝った方が何でも要求を叶えるっていうんだ」
「そんな勝負しちゃっていいの?」
問題はそこじゃない、と伏木蔵は答える。
「なんでも要求を聞いてくれるとなるとB城は本気になると思う。すると絶対必勝の団扇を使うと思うよ!」
「そうしたらB城がO城の団扇を奪った事実が明白になり、同盟を続けることが困難になるって事だね」
利吉が冷静にそう言う。でも、と平太は不安げに気になることを伏木蔵に聞いてみる。
「必勝の団扇の証拠がとれても、戦ごっこに負けちゃったら相手の言うこと聞かなくちゃならないんだよ?・・・危険じゃないかな」
「そうよ。悪評のB城だし」
しかし伏木蔵の表情は変わらない。むしろ彼は不気味な笑みを見せて水鉄砲を構える。
「そのためにぼくたちお子さまが参加するんだよ」
「・・・はい?」
その場にいる全員が凍りつく。ぼくたちお子さま、ここにいるお子さまはすみれと平太と伏木蔵。わっとすみれと平太は驚いた。
「私たちが戦ごっこに参加するの!?」
「むむむ、無理だよっ!!」
まぁ落ち着いて、と利吉が二人をなだめる。彼は少し考えて伏木蔵の案に賛成した。
「私は伏木蔵くんの案はいいと思う。・・・そうだな、6対6の対戦で、うち一人は本物の大名をいれるのはどうだ?」
「それいいですね!O城とB城の大名がでればより証拠は確実です!」
伏木蔵が盛り上がるなか二人は冷や汗をかいている。
「まってよ!勝ち目あるのー?」
「僕自信ない・・・」
なにいってるの、と伏木蔵は平太の肩を軽く叩いた。
「相手は僕達のことお子さまだって侮ってるかもしれない・・・。僕達は忍たまだよ?」
「うぅ、でも相手はお城の兵士だし・・・」
そういってへっぴり腰な平太を伏木蔵は腕を引っ張り耳打ちした。
「すみれちゃんに軍配団扇、返してあげたくないの?」
伏木蔵のその一言に、ぐっと平太は息を詰まらせる。そもそもは好意のある女の子が困っている姿をなんとかしてあげたいと引き受けた事件だ。ここで自分が怖いという理由で参加せず見ているだけ・・・そんな風景を想像しかけて、その想像をかきけすように平太は首を振った。さすがの平太であってもそこまで男は捨てられないと思ったのだ。
「自信ないし怖いけど、すみれちゃんを守るくらいなら・・・できる」
「その意気だよ平太!」
平太は覚悟を決める。いつも勇気のいる場面ではひっこんでいる自分だが、すみれの盾になるくらいは出来るだろうと拳を握りしめた。
「普通のお子さまなら勝ち目はないが、実践を積んでいる君たちなら目じゃないさ」
「なんじゃ、面白そうですな。ではさっそく戦ごっこの提案を殿にしてみよう」
浜野も伏木蔵の案に賛成の様子だ。すみれと伏木蔵は川村堂と忍術学園の場所を浜野に伝える。事情をきいていた団扇職人も頷いた。
「僕も悪い人に自分の団扇を使われるのは嫌ですし、応援してますよ!」
そうして決まったB城とO城による水鉄砲戦ごっこ作戦は開始されたのだった。
彼らは一度浜野と別れ、川村堂に残った源四郎に事情を報告する。彼は愛弟子が戦ごっこに参加することにはすんなりといってきなさい、と承諾する。
「師匠、少しは弟子のこと案じてほしいんですけど」
「私と一緒にいて遊んだことなどなかっただろう?思いっきり遊んできなさい」
少しは心配すると思っていた源四郎は弟子には旅をさせる主義のようで戦ごっこについては完全に遊びの延長としてみていた。
「もう!こうなったら暴れてやる〜!」
「すみれちゃん、強そうだね〜」
案外女の子の方が血気盛んなことがあるよね、とぼそりと伏木蔵がいう。そんな一言に平太は人知れずスリルを感じた。
「すみれ、忍術学園の方と協力するのだから、大川様に挨拶してきなさい」
「はい。わかりました」
「えぇ、学園長先生にお伝えするの?」
源四郎の言葉に不安がるのは伏木蔵と平太と、眉間にしわを寄せて気まずい顔をしている利吉。その微妙な雰囲気にすみれは首をかしげた。
「どしたの?」
「学園長先生、きっと生徒を巻き込んで大事になさるよ・・・」
「スリル〜」
すみれはそんな二人の言葉を適当に聞き流した。そして忍たまの二人は城が関わる事に学園長に無断で行うのはダメだろうと仕方なく報告することにした。
「私は両方の城の情報について調べたい。また後日、川村堂に来るよ」
そういって颯爽と去っていく利吉。きっと彼も戦ごっこの当日には見学にやって来るだろう。すみれ達は利吉を見送って忍術学園を目指した。
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