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しばらくよろず屋の店主に引かれるがまま、町を出て道を歩いた。丘をひとつ越えた先に見えるお城。静かな場所にあるその城の門の前に立ち、店主は門番と話すと、なんなく通りを許された。そのまま本丸へと入った入り口の前で、店主は立ち止まった。
「私は偉いお人ににはなしがあるから、君たちはここでまっててくれ」
そうして二人を残し奥へと消えていく店主。居なくなったところで二人はキョロキョロと辺りを見渡した。
「ここが千日城。平太ここにいるのかな〜」
「あの人、お子さまを連れてきてなにしようとしてるんだろ・・・」
ふと上からとんとん、と走る音が聞こえる。近くの階段から着物の打掛が見えたと思うと自分達と同じぐらいの女の子が降りてきた。きれいな着物姿、そしてその髪型から二人は彼女が姫だとすぐに察する。
「また誰か呼んできたのか?そなたたちも町から来たのか?」
「えぇ、えっとお〜」
突然現れた姫に二人は戸惑い頭を下げる。姫はよいぞ、楽にせよ、と笑顔を向けた。
「私は紅。皆は紅姫とよんでおる。二人は何者であるか?」
「僕たち、町から来た孫次郎と申します。この子は友達のすみれちゃん。紅姫さまはこの千日城のお姫様なのですか?」
孫次郎の問いに紅姫は頷く。
「うん。私は千日城の姫だ。父上は千日城の城主である。しかし客人が多いな。確かに私は友が欲しいとは言ったが・・・」
「友?紅姫さまはお友だちがほしいの?」
紅姫から聞いた言葉に二人は疑問を持つ。客人が多いというのはこのようにあのよろず屋の主人から人が何度か連れてこられてるからかもしれない。
「そうじゃ。姫は友がおらん。父にそれを言うとすぐに用意するとな。そうしたら昨日、そして今日とお主らのような者が来ておるのじゃ」
孫次郎とすみれは顔を合わせる。紅姫の言葉は昨日から行方不明の平太と重なった。するとまた上から足音が聞こえる。階段の上からひょっこり顔を出したのは、自分達が必死に探していた平太だった。
「平太・・・やっぱりここに来てたんだ〜」
「なんじゃ、お主ら知り合いか」
平太は暗い顔のまま、ゆっくりと階段を降りて紅姫の隣に来た。ごめん、と軽く頭を下げる。
「僕を探しに来たんでしょ・・・。先生や学級のみんなに迷惑かけてごめんね・・・」
「心配してたよ・・・。先生方も先輩も平太を探してるんだ・・・」
二人の話を聞いて紅姫は眉を下げた。
「すまぬ。私のわがままのせいである。平太を責めるな」
「紅姫さまが?」
すみれが紅姫の言葉に反応する。なぜ平太が紅姫と千日城へいるのか聞こうと思った時、離れていた店主が中年の男と共に戻ってきた。
「紅姫さま、勝手におでかけになられては困ります」
中年の男の姫への接し方とその姿は身なりがよいところからみると家臣だろう。店主はなぜか懐を押さえて満足そうにしている。紅姫は家臣の言葉に口を尖らせて不満そうだ。
「わかっておる。平太に見せたいものがあってな」
「見せたいもの・・・もしや、宝物殿ですか?あそこは部外者が入ってよい場所ではありません。部屋にお戻りください」
「ケチ〜」
家臣はそのまますみれ達の方へ振りかえる。家臣はすみれをまじまじと見たのですみれは戸惑ってみじろいだ。
「な、なにか?」
「うむ。今度はなかなか利発そうな娘である。これなら姫の友人にはよいな」
「姫さまの友人?」
「あぁ、それは・・・」
平太が話をすると店主は慌てたように言葉を遮った。そのまま彼は出口のほうへ歩く。
「あー!俺はこれで失礼します!」
「おじさん!」
すみれと孫次郎を置いて店主は世話しなく走り去っていった。その様子を見ていた家臣は呆れたように言った。
「はぁ、金をもらったらすぐに帰りおって。あやつに頼んだのは間違いであったかな」
「何を頼まれたんですか・・・」
すみれが訪ねると家臣の男は驚いた顔をした。
「なんだ、あの男事情も説明せずにここまでつれてきたのか。いや、すまない」
家臣は頭を下げた。それをみていた紅姫が事情を話す。
「先程私のせいだといっただろう?実は私は生まれてこの方友というものがいない。私はなんでもほしいものは与えてもらっておったが、友だけは与えてくれなかったのだ」
すみれたちは紅姫の言葉に疑問を持った。なぜなら友と言う存在は与えてくれるものではない。自分達が暮らしていくなかで自然とできていき、なんの契りもなく築かれていくものだからだ。
「まあ、変な話ですがどうしても友がほしいと言う姫さまのためにあのよろず屋の男に友人探しを頼んだのです。町の子どもなら城同士の関係に支障はないので」
とは言ったものの、事情も説明せずここまで連れてこられた自分達。ただの拉致になってしまっているといのが結果である。それについては家臣と紅姫も申し訳ないと頭を下げた。
「そして連れてこられたのが僕たちってこと・・・だね」
「なんにせよ・・・平太が見つかってよかった」
「ううん。心配させて・・・悪かったね」
大事な友が見つかって平太と孫次郎は喜びあった。その仲睦まじい姿を黙ってみていたのは紅姫だ。彼女は羨ましそうに見つめていた。
「うーむ。友と言うのはよいものだな・・・やはり、わたしも友がほしいぞ!」
「うーん、わたしもちょっと気持ちわかるかも」
すみれは友がいなかった訳ではないが、川村堂に来てから友人らしい友人は作らなかった。それは自分が鑑定士として腕を磨くために修行をしていることもあるが、不吉と言われている川村堂が嫌われており人がよりつかないというのが大きな点だ。
「そなたも友がおらんのか?」
「いないわけじゃないよ?ただ、はっきり言えないのよね。友達って関係は」
「なぞなぞか?」
紅姫はすみれの言葉が理解できず首をかしげた。友がいない紅姫には理解したくてもしきれない感情だった。
「とにかく、ここは姫さまのためにご友人になってもらいたい。頼みます」
大人にここまで頼まれては断れない三人。姫が友達に満足するまで返してくれなさそうな雰囲気を感じて三人は視線を合わせてうなずいた。
「姫さまのお友だち、なります〜・・・」
「うん。わたしも。城のお姫様のお友だちなんて光栄だわ」
孫次郎とすみれが答えると紅姫は嬉しそうに手をあげた。平太はそんな紅姫を見て微笑む。
「紅姫さま・・・よかったね」
「うん!では私と遊ぼう!私は庭へ行く!」
家臣にそう告げて子どもたちは紅姫についていく形で庭へと向かった。家臣はやっと姫が満足できる友を手にいれた事に内心安堵していた。その背中姿をみて彼は人知れず呟いた。
「短い人生だ。夢は叶えてやれねばな」
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