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帰り道、用事を済ませたすみれは着た道を戻る。すみれは手にしたお金を大事に抱えて嬉しさを噛み締めていた。
「まさか、買い取ってもらえるなんて・・・しかもあんな高値で!ううっ〜!」
和尚に渡すつもりだった写経は、きちんと買い戻すと言われ、高値で買い取られたのだ。まさかのいわくつきのものに買い手が決まり、上機嫌のすみれ。
「すみれちゃん・・・嬉しそうだね・・・」
「うん!うちは骨董屋だからね、川村堂復活に一歩近づいたし!」
「川村堂復活・・・てなに?」
復活もなにも、まだ川村堂は潰れていない。すみれは平太の何げない質問にくい気味で答える。
「平太くん!私が弟子入りした頃はまだ川村堂は賑やかな町の中にあったの・・・」
源四郎は若くして腕利きの鑑定士であり、城にも呼ばれていることが多かった。所謂人気の鑑定士であったのだ。その反面、極度のお人好しで、金に困ってる客のガラクタを高値で引き取ったりしているうちに、不気味な物まで買い取るようになった。すると町から店を怖がられるようになり、町の隅に店を移転していくうちに、ついにはこんな所まで追いやられてしまったのだった。
「大変だったんだね・・・」
「うん。だからいつかまた町中に店を出すのが目標なの・・・!」
「そうか・・・僕は・・・いまの川村堂がすごく好きだけど・・・」
すみれは驚いた。今まで川村堂は気味が悪い、不吉、はやく店をたためなどきつい言葉を言われ続けていたが、そんな店でも好きだと言ってくれたのは平太が初めてだった。
すみれは嬉しくて平太の両手を掴んだ。
「ありがとう、平太くん!優しいんだね。また遊びに来てよ!せっかく友達になったんだもん」
平太はうっと息がつまる。彼は女の子に友達と言われたのが初めてだった。ふわふわした感覚になり、戸惑う平太。しかし気づけばもう忍術学園に着いていた。
「うん・・・今度は僕の友達も・・・よ、呼ぶ・・・から」
「楽しみだな。忍者のお勉強、がんばってね」
「・・・あう・・・」
平太が慣れない感覚にたじたじしている間、彼女はそのまま平太から離れ、川村堂のある方向に帰ってしまった。平太はそれを見送って忍術学園へ戻る。門を開けてまず目に入ったのは日陰で3人並んでこちらを見ている一年ろ組だ。
「あ・・・帰ってきた」
「平太・・・おかえり・・・」
みんながにたりと笑う。皆すでに事情を知っているようで「詳しい話を聞かせてよ」と言う3人に、平太は初めて仲間たちに悪寒を感じた。ごまかす事が下手な平太は観念していままでのあらすじを話す。そうして、自分の恥ずかしい怖がりな一面も、すみれにフォローしたもらったことも、すべて彼らに話すことになるのだった。彼らはその川村堂に興味津々だった。
この事件をきっかけに一年ろ組やすみれはいろんなものに巻き込まれる事となるのは、この時はまだ知らずにいた──。
清常定の写経 -完-
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