百人斬り日記1


道を一歩あるくとがしゃり、と枯れ葉を踏む音がする。それが忍術学園へと続くにつれて木の葉はすくなくなる。
今日は源四郎とすみれは忍術学園に呼ばれ、ここまでやってきた。すみれが門をたたくと少しして少年の声がした。

「あれ、小松田さんいないの?どなたですか?」
「骨董屋の源四郎と申します。大川学園長に呼ばれて参りました」
「待っててください。すぐ事務員を呼びますから〜」

顔の見えない少年はそのまま走って行ってしまう。すぐに先ほどとは違う男性の声がした。お待たせしました、と門が開く。
すみれは以前その彼と会っていたので顔をみると元気に挨拶をした。

「小松田さん、またお会いしましたね!」

彼はすみれをみるとパッと呑気そうな笑顔を向けた。そして二人に入門票を渡す。

「すみれちゃん、いらっしゃい。そちらの方はお話ししてたお師匠さん?」
「はい。川村堂の店主の源次郎師匠です!」「川村堂…?」

ひょっこり、と小松田のうしろから現れたのは青い忍者服を着たすみれと同じぐらいの少年。それは先ほど門の前で対応してくれた生徒だった。

「なんか、どっかで聞いたな…図書室で言ってたような気がする」

二人は出門票に記入し小松田に渡す。そして思い出そうとしている少年にその通り!と声をあげた。

「お話は学園長から聞いています。能勢君、このお二人をその図書室に連れていって差し上げてくれるかい?」
「えぇ?構いませんけど…そういうのは事務員の小松田さんの仕事では?」

能勢と呼ばれた生徒はじとっと小松田をみる。小松田はバツが悪そうにしていた。

「実はさっき湯飲みを割ってしまって…片づけなきゃなんだ…あはは」「気を付けてくださいよ…じゃあ私がご案内します」

そういって急いで持ち場へ入って去ってゆく小松田。それをあきれたように見送って、能勢は二人に振り返った。

「私は能勢久作と申します。川村堂さんのお二人を図書室までご案内しますね」「お願いするよ」

表を通り過ぎ、校舎へと入っていく。途中にいろんな生徒に会うがみんな能勢と同じような忍び服だ。そういえば、平太も
学園の中では忍び服だった。改めて、ここが忍者の学校であることを認識する。
 そんなことを考えていると、彼はひとつの戸の前で立ち止まる。どうやらここが図書館のようだった。能勢は失礼します、と
ゆっくりと戸を引いた。

「あ…能勢先輩…学園長先生からお話があって…あれ?そちらの方はもしかして…」

源四郎とすみれはぎょっとする。そこには青白く痩せた骸骨のような少年がぼうっと卓上の前に座っていた。気のせいか彼の周りはつめたく
ひんやりとした風が吹いてくるような錯覚さえした。

「だ、大丈夫ですお二人とも!ちゃんと生きてますから!」

思わず二人とも能勢の後ろに隠れてしまった二人をなだめる。それをみた少年はにたりと笑う。

「いいんですよ…慣れてますし…それよりそちらの方は川村堂の源次郎さんとすみれさんでは?」
「はい…、君は?」

少年は二人に怒るわけではなく落ち着いた様子だった。彼は隣に置いてあった木箱を二人の前に持ってくる。

「私は二ノ坪怪士丸と申します。学園長先生からこの品を渡されまして、お二人をお待ちしていました」

二人はその場に座り込み、そっとその木箱を開ける。さらにそのなかの風呂敷をほどいた。すると一冊の黒い革の本が出てきた。

「これは・・・蛇のなめし革でできた本なのですね。珍しい」

人目みた源四郎がそう呟く。すみれも近づけてみると、蛇の鱗がびっしりとついていた。怪士丸は頷く。

「・・・これは忍術学園ができる前からある、出どころ知れずの品です。ずいぶん古いもので誰が持っていたのかもわからないと・・・学園長先生はおっしゃってまして・・・なら鑑定してもらおうと、川村堂さんをお呼びした次第です・・・」

慎重にとりだし、源四郎は中を見る。すみれも隣へより、その本の内容を読んで、青ざめた。本の一頁目には筆で達筆に「百人斬り日誌」と書かれていたのだ。怪士丸はその青ざめた二人の様子を見て、うっすらと笑う。

「ねぇ?怪しいでしょう?」

恐る恐る中を見ると、赤黒い文字かかれており、文の始めには日付と場所が書かれて・・・「一人目」とあった。ぱらぱらとめくるとその数は増えていき、最後には「百人目」と書かれて終わっている。すみれはまさか・・・と冷えきった気持ちになった。それ以上は恐怖で目をそらしたが源四郎はその内容までよんだようで静かに本を閉じた。



- 7 -

*前次#


ページ:



一覧へもどる