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すると天井の一部がめくれ、黒い影が降りてくる。うすい月明かりと木下穴太のもつ松明に照らされたその姿にいち早く気づいたのはいぶ鬼だった。

「金吾!?」
「忍術学園・・・もうこの出城に気づいたのか」

金吾は腰にさした刀に手をかける。

「こんなへんてこな作りの出城、気づかないわけないだろ!どうせ忍術学園に奇襲でもかけようと企んでいたんだな?」
「よくわかっているではないか。ここには忍たま一人だけのようだな・・・いぶ鬼、春鬼、こいつの相手をしろ」

「そんな・・・」

その言葉に躊躇ったのはいぶ鬼だった。やはり友と戦うのは心苦しいのか、とても戸惑っている。それを見たりんが一方前へ出る。

「俺が相手になる」
「春鬼・・・」

にやりと木下穴太が笑う。自分の持っていた太刀をりんに投げた。

「春鬼、どれ程の腕前か見せてもらうぞ」
「こい!ドクタケめ!」

りんはすらりとその刀を抜く。多少視界が悪いがそれはお互い様だ。彼女がけさ切りをすると金吾がそれを受け止める。その身のこなしは厳しい訓練を受けたりんでも目を見張る動きだった。とっさに敵わないと悟ったが、ここで一太刀でもりんが浴びればこちらの負けでこの場を引き下がる事ができるだろうとりんは思った。そうして何度も打ち合っていると見かねたいぶ鬼がりんに叫ぶ。

「春鬼!やめて・・怪我するよ!君でも叶う相手じゃない!」
「やめるな!ドクタケの意地を見せてやれ!春鬼!」

刀で打ち合う度に足を踏ん張るのでどんどんとがたつきの悪い床が鳴り、合間に刀のかしゃんという音が聞こえる。木下穴太は応援しているうちに、何かのスイッチが入ってしまったようだった。

「この荒ぶるリズム・・・!鳴り響く刀の音・・・そして私の・・・熱い応援!うおぉー!」
「穴太隊長!?どうしました?・・・あっ!」

いぶ鬼はとっさに理解する。大黄奈栗野木下穴太はミュージカル好き。この足音と刀の音と穴太の応援歌が、まるでミュージカルのリズムをとるようなシチュエーションになってしまったのだ。

「戦え!燃えろ!わーがー期待の星〜ドクタケ研修生〜しゅんき〜!」

「なんか、君の上司おかしくなってない?」
「あ、あぁ・・・おかしい」

様子の変化を察した金吾とりんは木下穴太のほうへ目を向ける。
試しに金吾がリズミカルに足音を立ててみると木下穴太もそれに乗り足音をたてた。

「かっしこく、つよい、ドクタケ研修生〜!あっそれ!」

ひょいと木下穴太が何かを投げる。それは城内を照らす燃え盛る松明。大きく弧を描き、それは火薬坪の中へと放り込まれた。

「え?」

次の瞬間、静かな山の中で盛大な爆音と、火薬に引火した爆発の光が一帯にまばゆく光る。その音と光に、木々はざわめき鳥達は何事だと飛び立っていった。

その大爆発に出城も粉々に吹き飛び、ドクたま達が作った出城も一瞬でなにも残らないただの平野へと戻ってしまった。瓦礫からいぶ鬼、金吾、りんが顔を出す。

「・・・原作がギャグ漫画じゃなかったら死んでた」

金吾はぼろぼろの状態で呟く。

「あーあ・・・すぐに出城は落ちるとは思ったけど」
「まさか自爆なんて・・・大黄奈栗野木下穴太部隊長〜!」

同じくぼろぼろのりんといぶ鬼は隣で呆然としている木下穴太をにらんだ。そんな二人に彼はばつが悪そうに手をいじったあと、ぺこりと頭を下げた。

「ゆ・・・ゆるしてちょーだい・・・」
「許しません!」

りんは怒りの気持ちを抑えきれずボロボロになった刀を木下穴太に向ける。それをみてぎょっとした木下穴太はその場を逃げようとしたのでりんが追いかける。

「あーん、上司が許してって言ってるのに!」
「だから許しません!」

そのまま二人とも遠くへいってしまう。そんな様子を二人で見ていたいぶ鬼と金吾。

「・・・ねぇ、金吾、こんな出城を作った僕のこと嫌いになった?」
「仕事なんだろ?だったらしょうがないさ。いぶ鬼はドクタケ忍者になるんだから」

その言葉にいぶ鬼はうつむいて黙りこんでしまう。できるだけいぶ鬼を落ち込ませないように明るくしてきた金吾だったが、やはり気負いしているのだろうか。しかし、いぶ鬼の反応は予想と違い、彼はにこりと金吾に笑顔を向けた。

「僕・・・金吾と仲良くなったこと、絶対に後悔してないから・・・いつかこのドクタケのやり方を変えることができたら・・・その時はまた一緒に遊ぼう!」

いぶ鬼にとって、ドクタケを変えたいという気持ちが宿ったのはこれが初めてだった。今の自分には無理かもしれないが、春鬼やドクたまの仲間がいれば、いつかの将来それも可能かもしれない。今はまだ敵同士でも、積み上げてきた友情は忘れない。そんな意味での「後悔はしていない」だった。

「・・・うん、約束!」

金吾も笑顔になる。屋根のなくなった本丸には、変わらず半月の月明かりが皆を照らしていた。



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