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昼過ぎ、ドクタケ領地内にある町へたどり着いたドクたまたち。彼らはドクたまの恰好では町人は警戒するだろうと
ふぶ鬼以外素顔のままやってきている。しかしふぶ鬼のサングラスをみたとたんあっと屋内に逃げ込む人も数人おり、改めてドクタケが嫌われている事を感じるのだった。
「あそこの饅頭屋さんよ」
山ぶ鬼が指さした先は「あかや」と書かれた暖簾のある饅頭屋だった。評判の饅頭屋なのか、かなりの人々が出入りしている。
「へぇ、こんなお店があるなんて俺しらなかった。山ぶ鬼はよく行くんだ?」
「たまにね!でもあのお饅頭屋さん、一つ問題があって…まぁ入るのが一番よくわかると思うわ」
意味深な言葉を放つ山ぶ鬼。彼女の言われた通りに列に並び、順番がやってきて5人で店に入った。
彼らは別段変わらずいつも通りに店主に挨拶をする。中年の背の高い男が一人で店主をやっているようだ。
「いらっしゃい…ん?」
店主はふぶ鬼を見て、血相を変える。そしてわなわなと震えだし、突然怒鳴った。
「ドクタケ!!この店にのこのこはいってくんじゃねえ!!でていけーー!」
そして飛んできたのは丁度男が持っていた蒸し釜の蓋。訳も分からず彼らはそれをとっさによけた。危険を感じたドクたまたちはすぐにその店を飛び出した。走って遠くまで離れて、息の乱れた彼らはその場にかがむ。
「…なに今の!」「いきなり怒鳴ったりして…」
しぶ鬼といぶ鬼がなぜ男がいきなり怒鳴ったのか理解できずにいた。りんは店主の事を思い出す。
「たしか、俺たちをドクタケって呼んでたな。山ぶ鬼、君がいってたのはこれの事かい?」
山ぶ鬼はりんの言葉に、黙ってうなずいた。聞けば以前、山ぶ鬼もサングラスをしたままこの饅頭屋を訪れたことがあり、先ほどと同じような目にあったことがあるのだという。
「あの店主さん、ドクタケのことが大嫌いみたいで、ドクタケ関係者とわかるとあんなふうにすごい剣幕で追い出すのよ」
「なんでそんな店選んだんだよ!」
ふぶ鬼が怒ると山ぶ鬼もむっとして言い返す。
「だってこの町で一番おいしいのはあそこなんだもん!協力してもらうならおいしいとこがいいでしょ?あんただって
サングラスさえはずせば入れるのに…」
「ぜったいやだ!これは僕のアイデンティティだから!」
「意味わかんない!」
喧嘩を始めた二人にしぶ鬼が割って入る。
「やめなよ。ここで喧嘩してても話は進まないよ。なにか別案を考えないと!」
しぶ鬼の言葉に二人は我に返り、黙り込む。りんもなにか方法はないかと考える。確かに山ぶ鬼の言う通り名物の饅頭をつくるなら評判の良い店に協力を頼んだ方が成功しやすいだろう。ようはドクタケが大嫌いな店主を納得させるような言い分をつくればいいのだ。
「俺がもう一度かけあってみる。しばらくまっててくれないか」
「春鬼、あのおじさんを説得できるの?」
「うん…俺に任せてみてくれ」
「…いまは春鬼に頼るしかないかもね」
自分は本来はドクたまではない。事情を話せばもしや、とりんは考えた。
皆に見送られ、りんは再びあかやの中へと入る。するとすぐに店主と目が合う。彼は怒鳴ろうと大きく口を開ける前に、りんは頭を下げた。
「お願いします!私たちの話を聞いていただけませんか!」
「だれが・・・ドクタケの関係者なら子どもでもお断りだ!」
店主は頑なにりんを釜蓋を投げようとして追い出そうとする。りんは顔をあげて店主を真っ直ぐに見た。
「私は訳あってドクタケ忍者のふりをしています。これには事情があるのです」
「・・・ドクタケ忍者のふり?」
男は追い払おうとした手を降ろす。どうやら話を聞く気になったらしい。
「はい。今のドクタケの極悪非道なやり方を変えるために、ドクタケ研修生を偽って潜入しています。今回は忍者隊首領の命により、ドクタケイメージアップを目的とした、名物になるまんじゅう作りに協力していただけないかと参りました」
そのいきさつを聞いて男は悲しそうな表情を浮かべた。ドクタケと聞くと拳を震わせている。相当な恨みがあるとりんは察した。
「だから、ドクタケに食わせるものなど、ここにはない!俺の・・・俺の大事な弟がドクタケの戦に巻き込まれて、死んだんだ・・・。戦いなんて向いていない、優しい弟だったのに、無理やり兵士にされた。断るとその場で斬られるからだ・・・」
「・・・そんな」
初めて聞くドクタケ城の実態に驚くりん。やはり今のドクタケは、独裁的で暴力によって国を治める卑劣な一面があったのだ。
「それ以来俺はドクタケが許せない・・・あんた、ドクタケのやり方を変えるって言ったな・・・」
「はい」
店主は鬼のような形相でりんに詰め寄る。ここで引いてはいられない。殴られる覚悟でりんはその場に居続けた。店主の右手が振り上がる。
「!」
その手は強く肩にのせられた。りんがそっと店主の顔をみやると、悲しくてやりきれないような男の顔が映った。
「変えれるもんなら、変えてくれ・・・これ以上、酷いもんは見たくない。あんたにその力があるなら、俺は協力するよ」
「・・・よいのですか?これはドクタケイメージアップのお願いなのに・・・」
男は頷いた。それを行うことで、ドクタケの未来を変えることができるなら、協力すると言う。
言葉ではなんとかそう答えてくれた店主だが、まだドクタケには恨みをもっているようで暗い表情はかわらなかった。
りんはもう一度ドクたまのところへ戻り、なんとか店にはいれることを説明する。
「へぇ!やるなぁ。どうやって説得したんだ?」
そう聞いてきたふぶ鬼にとっさにりんは答える。
「俺たちドクたまは、ドクタケとは違うってことを言っただけさ」
「それで納得してくれたの?あの感じだと関係者もいやがってたみたいなのに」
山ぶ鬼の言葉にりんは店主の事情を話すと彼らも悲しい表情を浮かべた。
「そうか、弟さんがドクタケの戦に参加させられて・・・」
「ほんと、酷いわ・・・」
自分達もそのドクタケにいずれなってしまう。だが、彼らにはそんな残酷なことはできない。結局はみんなにドクタケの今のやり方には納得できないのだ。
「うん・・・春鬼の言った通りだ!僕たちはドクタケとは違うよ!」
「あかやの店主さんに、それを見せつけなくちゃ!」
俄然ドクタケイメージアップ作戦にやる気を出すドクたま達、急いであかやに戻り、改めて皆は店主に頭を下げた。店主は厳しい顔つきのまま頷いた。
「どうかドクタケ名物を作るためにご協力ください」
「あぁ、いいよ。協力してやる。でも俺が教えるのは作り方だけだ。何を作るか、材料は全部おまえ達が考えるんだ」
ドクたま達はその条件に戸惑う。てっきり美味しい饅頭を作ってくれるとばかり思っていたのでその先の事は考えていなかったのだ。
「俺はドクタケ関係者のおまえ達にすべてをやってやる気にはならんからな」
「・・・わかりました!名物はこちらで考案します!出来たら作り方を教えてくださいね!」
その態度にドクたまリーダーのしぶ鬼の根性に火がついた。必ず店主の唸る美味しい饅頭を考えようと決心し、ドクたま達は店を出る。
「・・・といったものの・・・ノープランなんだよね〜」
「だー!」
店を出てのしぶ鬼の言葉に皆はずっこける。とりあえず話し合わねばと適当なご飯屋に入った。そこには沢山の惣菜が置いてあり、自然と小腹がすいてくるのだった。
「饅頭っていうとあんことかが多いよね」
「それじゃありきたりじゃない?名物にするには同じものじゃ結局負けちゃうと思うのよね〜」
山ぶ鬼が品書きを見ながらどれを頼もうかと悩んでいる。それをみていぶ鬼は思った。
「あっ・・・惣菜とか!」
「饅頭の中身を惣菜にするってこと?」
いぶ鬼の提案にしぶ鬼はそれだよ!と身を乗り出した。饅の中身を惣菜にすることで、おやつにもなるしおかずにもなる。旅の道中や戦いの最中にも手軽に食べられる饅頭がつくれるかもしれない。
「コロッケパンとか、焼きそばパンとか、そっち系ってわけか」
「その中身をどうするかだけど・・・」
店に並べられた惣菜を彼らはなんとなしに眺めているが、どれもぴんとこない。うんうん唸っている中、りんはふと故郷を思い出した。
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