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しぶ鬼の家の近くの林へと向かう。林の奥には激流の川がながれており、豪々と音が響く。
三人はそれぞれ籠を持ち、林に落ちている薪になりそうな枝を探す。
「もう薪はからっぽらしいからたくさん持って行かないとね」
しぶ鬼はそういって二人から離れ薪を拾い始めた。達魔鬼は川近くの方へ行き、りんを誘った。
「春鬼くん、こちらにもたくさんあるようだ。手伝ってくれるかね」
「はい」
その言葉につられ、りんも奥へと寄る。その時、達魔鬼の胸に、なにかを忍ばせてるのを感じた。こちらの警戒を悟られないようにりんは自然にふるまい、その場にかがみ薪を拾う。
「春鬼くん、ドクタケの研修はどうかな。うまくいってるだろうか」
「はい。大変なこともありますが、色んな事を教えてもらい大変勉強になります」
「ほう、例えば?」
「ドクタケ忍者の戦法等は特に」
「…君の里に持って帰る情報として役は立つかな?」
りんは薪を拾う手を止めて、立ち上がる。達魔鬼は薪を拾いながら不敵な笑みを浮かべていた。
やはりこちらの正体を感づかれているようだった。自分の目的がわかるとドクタケ城にはいられず、課題も失敗に終わる。この際自分が何者であるかなどは構わない。この目的さえ隠し通さなければ、とりんは思った。
「私は調査のために来ているわけではありませんので」
「なら尚更…ほおっておくわけにはいかんな」
ひとつ、薪を籠に入れて達魔鬼は立ち上がる。殺気を感じたりんは身構え一歩後ずさる。
静かに達魔鬼が取り出したのは短刀。
「君には薪を拾っている最中に川に落ちたという事にさせてもらうよ」
「!」
離れた場所にはしぶ鬼がいる、音もなくしとめようと達魔鬼は素早く距離を縮めていく。こちらは
武器等何も持っていないので抵抗ができない。それに相手は一流忍者だ。体術でも勝算はなかった。
足場も悪く視野も悪い林だと分が悪い。攻撃をされないために川近くのひらけた場所へと逃げ込む。それは達魔鬼の狙い通りでもあった。
「君が何を目的にしているかは知らないが…しぶ鬼に危害を加えるなら…容赦はしない!」
「そんなつもりはありません」
じわじわと追いつめられるりん。後ろは高い崖、下には激流の川が流れていた。達魔鬼はどうやらりんがドクたまに危険が及ぶことを想像しているらしい。断じてそれは違うと言いたいが、そうすると目的を話すことにもなる。りんはその激流を確認し、覚悟を決めた。
「なら目的を言え。なぜドクたまに近づいたのだ」
「…それは言えません」「ならば、落ちてもらおう!」
達魔鬼が短刀を構えた時、りんはすぐさま崖を飛び降り川へと飛び込んだ。
達魔鬼は落ちたその川を見やる。流れの速い川だ。あの小柄な体ではなかなか上がっては来れないと、短刀を収めた。
その音に気付いてやってきたのはしぶ鬼だ。慌てた様子で達魔鬼をみて駆け寄ってくる。
「パパっ!なにかあったの!?」
「しぶ鬼…春鬼君が薪を拾う最中に川に落ちたみたいだ」
その言葉にしぶ鬼の表情は真っ青になる。薪を拾っている場合ではないと、達魔鬼の言いかける言葉を無視して川へ下る道を駆け出した。達魔鬼のしぶ鬼の止める言葉も聞かず、彼の姿は消えていった。
「しぶ鬼…そこまで彼女を?」
「春鬼!春鬼ー!」
しぶ鬼は息をきらして川の側を走る。あまり近づくと自分ですらまきこまれそうなほどの荒い流れだ。
どこまで流されてしまったのか、しぶ鬼はりんを心配した。大事な友の危機、絶対に見つけるまで帰らないとしぶ鬼はりんを探し続けることにした。
一方りんは長い間激流に流れ流され、穏やかな渓流まで流れ着いてしまっていた。途中石にぶつかったりと痛い思いもしたが大きな怪我もなく、なんとか立ち上がり川から上がることができた。りんは大きなため息をつく。
やはり城でおとなしくしていればよかったと後悔する。まさか達魔鬼が一瞬で自分を見破るほどの観察眼を持つ忍者とはおもわなかった。普段共に過ごしているお気楽な一面もあるしぶ鬼をみていて完全に油断していた。
髪をほどき絞ると水がしたたり落ちる。辺りに人がいないことを確認して着物を脱ぎ、衣服の水をきつく絞った。
体を乾かしたら城へ戻ろう。しぶ鬼には川に落ちてしまったと説明すれば納得してくれるだろう…そこまで考えたが今後は達魔鬼の警戒もあるわけで、もしドクタケに自分が怪しいという情報がもれたらと思い、りんは思いとどまった。
「これはもう試験失敗かな…」
見えてきた結果にうなだれてしまう。このまま自分が行方不明になったことにして里に戻った方が賢明かもしれない。
そんなことを考えた時だった。人の声が聞こえたような気がした。着物を着なおし、木の茂みに隠れりんは辺りを見回す
「春鬼!春鬼ー!」
川上から見えたのは、まさかのしぶ鬼であった。長い間ずっと探していたのだろうか、声が枯れていた。
りんは迷った。ここで自分が出てきたらまた達魔鬼に狙われてしまうのではないか?自分の素性がばれてしまうのではないかと思ったのだ。
改めてしぶ鬼をみるとずっとりんを探していたため、その足取りや表情は疲れ切ってた。りんはそこで胸の奥が痛んだ。
「しぶ鬼…」
思わず声が漏れた。普段なら聞き逃すであろうその声は、神経を集中していたしぶ鬼の耳にはいった。
「春鬼?どこにいるんだ?」
絶対にみのがすまいとじっくりと辺りを見回すしぶ鬼。そこから木の茂みに見える人影に彼は駆け寄った。そこには自分が必死に探していた春鬼が立っていた。しぶ鬼はようやく見つけた友人に思わず抱き着く。
「しゅんきー!!」
「うわ…いきなり抱きつくなよ」
「だってもう会えないかと思って…」
「大丈夫だよ。ほら、生きてるだろ」
とはいえりんの姿は激流に流されてぼろぼろだ。しぶ鬼にはもともと華奢なりんの体がさらに弱弱しく見えた。
「なんか、かろうじて生きてるって感じなんだけど」
「しかたないだろ。流されてる間大変だったんだから」
「川に落ちるからだよ。そんなに薪拾いに夢中になるなんて思わないって」
しぶ鬼はりんと達魔鬼の間に起こった出来事は知らないようだった。りんは心のどこかで安心した。
一歩進もうとしてよろけるりんを支えるしぶ鬼。随分と体力を消耗しているりんを見て立ち止まる。どこか休める場所はないかと辺りを探すと、林の中に岩穴を見つけた。
「春鬼、休もう」
「あ、あぁ・・・」
自分の肩をりんの腕にかけ、ゆっくりと林へ進む。横穴にたどり着いて入り口の前に二人は腰を掛けた。彼女の衣服は先ほど絞ったものの、しぶ鬼が触れるとひんやりした。
「春であったかいといってもさすがに風邪引くよな。・・・火を焚くからまってろよ」
「いいよ・・・おれは大丈夫だから」
力無げにりんは答えるが、それでは身体が休まるばかりか寒さで動けなくなってしまうだろう。りんの言葉は聞き入れなかったことにしてしぶ鬼は薪になるものを探しに出た。
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