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ぱちぱちと燃える焚き火にあたるとりんも幾分か顔色が戻る。辺りは薄暗くなってきている。辺りは既に夕暮れ時だった。

「もう夕暮れか。俺、長い間流されたんだな・・・」

それをしぶ鬼がずっと探していたと言うことだ。りんはなぜしぶ鬼がこんなに自分に必死になってくれるのか理解できなかった。
なぜなら自分と他人は違う。忍者に情は弱みになるからと教えられ、常に壁を隔ててきたりんにとって、彼の考えにはまだわからないことだらけだ。

そんなことを考えてぼうっと火を眺めていると、しぶ鬼が口を開いた。

「なぁ、春鬼」
「・・・ん?」

しぶ鬼はたまに水が滴りおちる濡れた服を指差す。

「服、脱げよ」

平然言われたその一言にりんは一瞬女性に失礼だと一発しぶ鬼を怒りそうになったが、今は自分は男である。冷静になってりんは答えた。もちろんしぶ鬼の前で服などは絶対に脱げない。

「いい。そのうち乾くだろ」
「寒くない?ふんどし一丁になった方が暖かいぜ?」

ふんどしなんか巻いてるわけないりんは頑なに首を横に振る。しぶ鬼もりんのまだ青ざめた顔色に、リーダーとして無視はできないと脱ぐことをすすめてくる。

「風邪引くと困るだろ?脱げって」
「いいってば!」
「・・・あっ」

断固として嫌がるりんにしぶ鬼は間違った考えを察した。もしかして春鬼は身体が華奢な事をとても気にしてるのではないかと思ったのだ。男にとって良い体格はひとつの憧れである。貧相な体つきを見せたくないのは、春鬼がコンプレックスだと思っているのではないかと思ったのだ。

「わかった。脱がなくていい」

そう思うとあっさりと引くしぶ鬼。ほっと一安心したりんだが、次はしぶ鬼が脱ぎ出して思わずりんはずっこける。

「なんでしぶ鬼が脱ぐんだよっ!」
「春鬼が僕の着物着ればいいと思ってさ。濡れてないし」
「しぶ鬼がふんどし一丁になっちゃうんじゃないか!」
「春だし、平気平気」

ぽいっと乱雑に着物と袴を投げてくるしぶ鬼。りんのいった通りふんどし一丁になってしまったしぶ鬼を自分のせいながら不憫に思った。

そもそもそこまでしなくてもいいのに・・・とりんは思ったがどうしても自分の事を気にかけるしぶ鬼を落ち着かせるためには、この着物を着るしかないと立ち上がった。

「じゃあ、借りるよ」

そういって林の奥へと消えてしまったりん。着替える姿も見せたくないとは相当悩んでるのだなとしぶ鬼は同情した。

(今度筋トレのいい方法教えてやろう・・・)

そんな検討外れな助言を、しぶ鬼は真剣に考えていた。

 しばらくしてりんが着替え終わる。乾いた服に着替えるだけで随分と暖かさが違う。裸同然になってしまったしぶ鬼には悪いが、本当に風邪を引いてしまうところだったので密かにりんは感謝した。

岩穴にもどると川の方から出てきたしぶ鬼。なんと手には鮎がいた。

「捕ったのか?」
「すごいだろ?手づかみだよ」

川のなかで泳ぐ魚を捕まえるのは至難の技だ。自慢げにほどよい大きさの鮎を二匹捕まえ、下処理もしてしぶ鬼は戻ってきたのだった。

「昔よく川で皆と遊んだからさぁ、結構得意なんだよね」
「あんまりふんどし一丁でうろつくなよ・・・」
「だって腹が減っちゃうじゃん。サバイバルも忍術のひとつ!」

適当なことを言い出すしぶ鬼にくすりとりんは笑う。その可憐にも見えた笑みに、しぶ鬼はどきりとした。男の微笑みにときめくなど今まで初めてだった。

「春鬼ってさ・・・その・・・」
「なんだ?」
「な、なんでもない・・・」

きっと、辺りが暗くなってきたせいで見間違えたのだろうとしぶ鬼は首を振る。捕まえた鮎を適当な枝に刺してそのまま焚き火に近づけた。

今日はもうこの山道でしぶ鬼の自宅に戻ることはできない。この岩穴のなかで二人は野宿することに決めた。夕食を食べた頃には夕日も沈み、夜になっていた──。



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