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「パパ、心配してるだろうな・・・」
「ごめん。俺のせいで」

実際はりんをここまで追い詰めたのは達魔鬼だが・・・。そう考えて、改めて戻ったときの事を考える。
このまま黙っていると時期にドクタケ城に疑いを持たれてしまう。なんとかうまく交わす方法がないかを考えていた。

「なんか考えてるだろ?春鬼・・・」
「え?」

りんはどきりとして顔をあげる。しぶ鬼はりんの方は見ずにそっと薪を火の中に入れた。

「なんでそう思うんだよ」
「なんとなく・・・ねぇ、僕にも話せない?」

しぶ鬼はりんと共に研修をしていくなかで、彼女が頼りになることや、冷静であること、厳しく冷たいふりをして、本当はとても優しい人柄であることを知っていた。しかし、ふと黙りこんでぼうっと遠くを見ることがあって、しぶ鬼はそれが心配であった。なにか人に言えない悩みがあるのではないかと思ったのだった。

「悩んでないよ・・・。しぶ鬼はドクたまのリーダーだからって、すこし過剰なんじゃないか?」
「リーダーだからじゃないよ」

しぶ鬼はばきりと薪の枝を折る。そしてもう一度、リーダーだからじゃない、と静かに繰り返した。

「春鬼は僕のこと、ただのドクタケの研修生の一人とおもってるのかよ・・・」
「・・・だってそうだろ。俺達は忍者だ。それぐらいの割り切りは当然だ」
「じゃあ、なんで僕たちを助けるんだ?」
「・・・助けたつもりなんて」

ない、と言おうとしてりんは考える。ドクたまを危険から守ることもドクタケの戦を避けるために繋がる。そう思って彼らの手助けをしてきたつもりだったが・・・本当なそれだけなんだろうか。ではなぜ、自分はしぶ鬼とこうして共にいるのだろう?彼を振り切って立ち去ることも出来たはずだ。りんは自分を振り返り、疑問に思った。

再び黙ってしまったりん。しぶ鬼の問いは、それで答えがてでしまったのかもしれない。

「やっぱりそうじゃないか」
「・・・しぶ鬼、俺は本当は冷たいやつなんだ・・・だから、俺のことは必要以上には考えない方がいい」

りんは急に不安になった。こんなにドクたまの仲間として自分に良くしてくれるしぶ鬼を、いつかは裏切らなくてはならない。その時彼は傷つくだろうか。自分を恨むだろうか・・・そう考えると罪悪感が湧いてきた。それは出城を作るときのいぶ鬼の感情と同じもののようだった。

「やだ」

一言はっきりとしぶ鬼は答えた。そうして真っ直ぐな瞳でりんを見た。

「だって僕と春鬼は相棒なんだ。将軍は僕で軍師は春鬼。そういっただろ?」
「お前、本気でそれを?」

初めてあった日の夜に、しぶ鬼は同じことを言った。戦が行われる中で、軍隊の将軍と軍師は絶対の信頼関係が必要だ。彼はりんと自分はそれと同じだと言うのだった。

「当たり前だろ。だから信じるよ。春鬼を。なにかあっても僕は絶対にお前の味方だからさ!」
「しぶ鬼・・・」

りんはその言葉に胸が熱くなった。人からそんなことを言われたことなど一度たりともない。一族は皆忍として厳しく接され、親族とて信じるなと言われ続けてきた。そんなりんにとって、しぶ鬼の言葉は自分の世界をくつがえすほどの力があった。

「わかった。私、いつかきちんとしぶ鬼に話すから・・・」
「うん。待ってる・・・」

ずっと重荷だと思っていた感情がふっと軽くなる。すると猛烈な眠気がやって来てりんは静かに横たわった。

「なんか急に眠くなってきた。悪い・・・俺、寝るよ」
「うん。おやすみ」

すぐに寝入ってしまったりんをしぶ鬼は見守る。彼女は長い間川に流されてとても疲れきっていたのでそのせいだろうと思った。そのあどけない少女にも見える寝顔に、妙な独占欲のようなものが湧いた。

「僕、そっち系なのかな・・・」

しぶ鬼はりんを男と完全に決め込み疑っていないので、その感情に戸惑ってしまう。先ほど相棒だと言ったばかりの手前そんな血迷った考えに駄目だと首を振った。自分も山道をずっと歩き続けて疲れてしまったのだろう。そう思うことにして、しぶ鬼は自分ももう寝ようと、その焚き火を消した。




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