ドクコレを開催だ1



この間まで満開だった桜もあっという間に散り、暖かな日が多くなった。田んぼも田植えの季節になり、一面に苗の緑が丘映える。その道を、山ぶ鬼とりんは歩いていた。目的はこの先にある賑やかな町。

「ほんとによかったの?あ、あ、あたしなんかが春鬼くんの恋人役なんて・・・」
「むしろあの三人が俺のカノジョ役だと不安だよ」
「そうじゃなくて、「私」の「カレシ役」なんて、嫌じゃない?」
「嫌なわけないだろ?」

春鬼の爽やかな笑顔とその言葉に、山ぶ鬼はときめき頬を赤らめる。春鬼は山ぶ鬼にとって、恋にも似た憧れの存在なのだ。

なぜ彼らが恋人のふりをしているのか、それはある一人の町人を調べるためだった。その町人は、着物屋で評判の店を営んでいるのだ。

というのも、ドクタケ城にもくの一はいる。彼女達はドクタケにいるがゆえにサングラスに赤い装束姿が常である。たまにはおしゃれしたいとある日ドクタケ城でくの一デモが勃発。不満で鬼と化した女性達に八方斎も敵わず、ドクタケ城に評判の着物屋を呼ぶことになったのだった。城でおしゃれしたいなど忍者としていかがなものかと思うが、意外にも社風を気にする八方斎は、研修生である山ぶ鬼にその町で人気の着物屋をさらうように言いつけられてしまったのだ。

その指令をうけた山ぶ鬼は悩みに悩んで、ドクタケの食堂で一人食事をしていたりんに密かに相談することにした。

「春鬼くん、お疲れさま。いま話してもいい?」
「山ぶ鬼、いいけど。どうしたんだい?声なんか小さくして」

山ぶ鬼はまわりに他にドクたまがいないか見渡す。この食堂にいるドクたまは自分とりんだけだと確認して彼女はそっと事情を話した。

「──そういうことで、その町の着物屋さんを連れ去らなきゃいけないの。どうしよう?」

山ぶ鬼の相談に、りんは考える。
なぜ連れ去るのか、それはドクタケが嫌われた城で、名前を出せば嫌がることは目に見えているからである。ならば問答無用とばかりに連れ去った方がドクタケ的にはそれが一番手っ取り早いのだろうと考えているのだ。

「連れ去ったところで売ってくれるとも限らないからなぁ。相手から来てくれるのが一番じゃない?」
「もっともだけど・・・でもドクタケ城にくるの嫌がるんじゃない?」
「とりあえずその着物屋を調査しに行くとか?その人がどんな人なのか、見て考えてもいいと思うよ」
「・・・それもそうね。じゃぁ明日早速行ってくる!」

りんに勇気づけられ、その着物屋を調査することにした山ぶ鬼。客を装いその着物屋に話が出来る雰囲気か、見てみることにした。やはり春鬼に相談してよかったと思っていると、りんが山ぶ鬼に言った。

「俺もいくよ」
「え!?春鬼くんも?でもその着物屋は、女性向けのお店なんだけど」
「俺が山ぶ鬼の恋人になるんだ。カップルを装えば自然だし、よりうまくいくかもしれないよ?」

思わぬ憧れの春鬼の提案。しかも偽りとは言え、恋人として町を歩けるのだ。山ぶ鬼はどきどきする気持ちを隠してりんに答える。

「いいの?」
「うん。ぶっちゃけるとこのアイデアで俺以外のドクたまと一緒に行ったとして、うまくできそうにないだろ?」
「ふふ、言えてるわね!」

山ぶ鬼はりんの言葉に朗らかに笑う。りんは山ぶ鬼の誰にでも素直で明るい性格が好きであった。男に偽っている以上、女性とは距離をおかねばならず、仕事以外で関わることのなかった山ぶ鬼を知る機会になると思ったのだ。

「じゃあよろしくお願いします」
「俺でよければ、君をエスコートさせてくれ」
「やだっ、春鬼くんったら」

─そんなこんなで、二人は今日、恋人同士として町へ出て山ぶ鬼の着物を送るというシチュエーションで町で評判の着物屋を目指しているのだった。



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