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「辻村さん、お身体の調子はいかがですか?」
「伊助くんか・・・わしはもうあかん・・・ファッションデザイナー失格や・・・」

起き上がったのは二十歳ほどの若い青年。髪の毛を一部金色に染め、派手な着物姿の奇抜ないでたちの男であった。彼の顔色は悪く、部屋は布切れや鉄こて、裁縫道具などがあちらこちらに散らばっており、伊助は顔を歪めた。

「しっかりしてください。新作の反物を持ってきたんです。お仕事、できますか?」
「できるわけないやん!伊助くんちの反物は上等や・・・。今のわしはなーんも思い付かへんし、その染めに見合う作品はつくれん!」

スランプから抜け出せない自分が苦しく、めそめそ鳴き始めた着物の店主の辻村。伊助はもう慣れてしまってるようでそれを呆れたようにみて、おもむろに辺りに散らかった道具や布切れを片付け始めた。どうやら反物をもってくるついでに部屋の掃除もやってあげているようだった。
山ぶ鬼はおそるおそる辻村に話しかける。

「あのぅ、はじめまして。私はとある城の忍者なんですが、辻村さんにお願いがあって来たんです」
「・・・わしにお願い?」

涙でぐしゃぐしゃの辻村が顔をあげる。見慣れない人物、しかも忍者がなぜ自分を訪ねてきたのだろうと疑問を持つ。事情を正直に話そうとした山ぶ鬼をりんが止める。変わりにりんが都合のよい嘘の事情を話した。

「実は私が恋人であるこの子に着物を送りたいと思いまして、町で名高い辻村屋さんに注文をとやって来たんです」

辻村がその話を聞いて深くため息がついた。

「あんさんみたいなお客さんはよう来るけど、さっき聞いたやろ?わしスランプやねん。なまじその仕事をして、つまらんものを作ったらわしの名折れになるさかい、今仕事はしばらくお休みなんや」

かえってやーと再び寝込もうとする辻村。りんと山ぶ鬼は顔を見合わせた。山ぶ鬼は出直そうかと聞いてきたがここで帰っては作戦は失敗に終わる上に、女性に対しての面子をかけた八方斎の機嫌も損ねてしまうかもしれない・・・。りんは辻村にひとつ質問をすることにした。

「辻村さんは、どうしてスランプになったと思いますか?」

何気ないりんの問いに辻村がうーんと考える。きっとうまくいかないと思ったきっかけがあるはず。

「確か、スランプに陥る前は毎日注文が来てごっつう忙しかってん。ほんで休みの日になんとなく自分で好きな着物を作ってみたんや。そしたら作るものが全部いまいちで、そのままどんどん泥沼の毎日・・・」

そうして自分の納得するものが作れない日々が抜け出せなくなってしまい、ついには仕事にまで影響が出て、寝込んでしまったという事だ。

「せやなぁ、わしの勘がにぶっとるっちゅうか、着物が強すぎて人を殺しとんねん。あかん、考えるとまたイライラしてきた」

頭を抱えて悶え出す辻村。りんはそういうことなら、と提案する。きっと注文通りの着物作りを重ねすぎて本来辻村の個性の感覚を忘れてしまったのだろうとりんは思った。ドクタケくノ一をモデルを用意して辻村が自由に着物を作る機会を作ればもしや・・・と考える。

「もしよければ、ドクタケ城でスランプ脱却のファッションコレクションなんてやってみてはどうですか?」

「ファッションコレクション?」

山ぶ鬼と辻村が繰り返す。

「はい。ドクタケ忍者集団をモデルにしてドクタケ・ファッションコレクションを開くんです!略してドクコレ!」
「ドクコレ・・・」

辻村はその名前を繰り返す。人をモデルにして着物を作ることはしばらくしていない。それなら自分の感覚を取り戻せるかもしれないと考えた。辻村はむくむくとやる気が沸き立ち、立ち上がり拳を高くあげた。

「よっしゃその企画、乗った!」

掃除をあらかた終えた伊助がやってくる。大筋の話を聞いていた伊助も面白そうだとその会話に入る。

「僕もドクコレ見に行っていい?」
「そうね!辻村さんの作品発表として催してもいいかもしれないわ」

──そうしてドクタケ・ファッションコレクション、略してドクコレの企画が立ち上がった。りん、山ぶ鬼が大方の企画を組み立て、ドクタケ城にいる八方斎に提案すると、笑顔で「おっけー!」と了承を得ることができた。ドクタケくノ一も人気のファッションデザイナー辻村に会えることや、モデルとしても参加できることに大変喜び、すぐに話題になっていた。

開催は二週間後、りんと山ぶ鬼も辻村の製作に協力し、ドクコレ成功に向けて一所懸命に取り組むのだった。



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