新型火薬を奪い取れ1



ドクタケ研修生になってから一ヶ月半が経とうとしていた。なんとかドクタケに大きな戦をさせず過ごせている。しかし油断は禁物、いまりんがこうして過ごしている間にもドクタケ上層部では着々と大きな戦の準備をしているかもしれない・・・と、思うようにしているが、実際は怪しいところだ。

なぜならこのドクタケ、確かに悪どい行いが多く戦好きだが、城主含めて忍者隊ものんきで、企てる謀もいつも失敗ばかり。りんが阻止する前に自滅というお決まりが多いのだ。

「春鬼〜聞いた〜?」

しぶ鬼の声が廊下から聞こえる。勢いよく戸を引きりんの元へ駆け寄る。 

「今度ドクタケ忍者隊のタケノコパーティーをやるんだってさ。行く?」
「・・・駄目だ」
「ん?ダメ?行けないの?」
「そうじゃないんだ・・・」

そう、当初はここへのんびりするためにりんは来たのではないのだ。本来ならもっと気を張り詰めてドクたまとも接していかねばならないのだ。りんはしぶ鬼が持ってきたタケノコパーティーのチラシを払い退けた。

「なぁ、俺たちドクタケ忍者になるために研修にきてるんだよな」
「うん・・・」
「最近、こんなのばっかじゃないか?」
「こんなのって、こんなの?」

タケノコパーティーのチラシを開き首をかしげるしぶ鬼。真面目な春鬼のことである。きっともっと忍者として経験を積みたい気持ちで焦っているのだとしぶ鬼は思った。確かに研修としてはその気持ちは当然、むしろそれが本来の自分たちのモチベーションであるべきなのだ。だが、ここは残念ながらドクタケ城である。

「春鬼、ドクタケ城はそんなもんだよ・・・ドクタケだっていつも悪役してるわけじゃないんだ」
「なんか気が抜けそうで心配だよ」
「ま、春鬼もドクタケ忍者になるなら慣れないとね」

そんな平和な会話をしていると、どたどたと走ってくる足音。息を切らしてやってきたのはいぶ鬼だった。

「二人とも!任務だよ!」
「いぶ鬼!」
「穴太部隊長が会議室に集まれってさ」

よしきたと春鬼は勢いよく立ち上がり部屋を颯爽と出る。その姿にいぶ鬼としぶ鬼があっけにとられていた。

「どしたの春鬼?」
「なんか、仕事したいみたい。真面目だよなぁ。あいつ」

残った二人は歩いて会議室に行く。ふぶ鬼はもうすでに来ていて、りんとならんで穴太の来るのを待っていた。どうやら山ぶ鬼は呼ばれていないようだ。みんなが揃うとちょうど大黄奈栗野木下穴太がやって来た。

「ドクタケ研修生の諸君、もうドクタケ城での生活は慣れたかね。今回集まってもらったのは、君達にとある屋敷に潜入してもらいたいのだ」

そういって穴太は近くにいたふぶ鬼に一枚の地図を渡す。印にあったそこはここから歩いて行けるほどの距離にある場所である。

「その場所にはひとつの武家屋敷があるそこはよく会所で使われており、忍者も集まるようだ・・・そこで我々はとある情報を手にいれた。その情報とは新型火薬が出来たというものである!」

新型の火薬ときいて、彼らも興味津々だ。穴太は続けて語る。

「その火薬の考案者はオニタケ忍者にいる早すぎた天才によるものだ。恐らくその武家屋敷もオニタケの仲間だろう・・・我々は武家屋敷に忍び込み、その火薬の情報を奪うのだ!」

「質問でーす。その任務が僕達の成績の何が関係あるんです?」

いぶ鬼の質問に穴太は少し照れるような仕草をして答えた。

「女装の成績だ」
「じょそう・・・」

その言葉にしぶ鬼、いぶ鬼、ふぶ鬼はげっとする。彼らは女装があまり得意ではないのだ。それはドクコレの一件でりんはうっすらと感じていた。オニタケ忍者が潜む武家屋敷に下女としてしばらくの間潜入し、その新型火薬の情報を盗む・・・そんな内容の任務である。

「というのもな、この間のドクコレをみた魔界之小路先生が君たちの女装をみて頭を抱えていたらしいからな。ま、忍者にとって女装は重要な技術であるので、しっかり頑張りなさい」

以上!と言ってそのまま穴太は部屋を出ていく。その足音が遠退いてわっと彼らは顔を見合わせた。

「あっちゃー!あれ、魔界之小路先生みちゃってたんだ〜」

憂鬱な任務にはぁ、とため息をつく皆をみてりんはだらしがないなと一喝する。

「これはれっきとした仕事だ。嫌だからっていってる場合じゃないぞ?」
「お前は成績関係ないから平気だよな〜・・・あっ、春鬼、女装得意だったりする?」

まじまじと三人に見つめられるりん。彼らには春鬼が女装する姿は案外簡単に想像できた。
りんはそもそも自分は女性であるので、と思ったがここで油断していると三人に正体がわかりかねないとそちらの方が心配だ。

「ふ、ふつう・・・まぁ、男とばれたことはない程度だよ」

嘘はついていないつもりだ。彼らはそれを聞いて頭を下げた。

「僕達よりましだろ?コツを教えてよ〜!」

成績がかかっているだけに彼らも必死だった。三人はりんに頭を下げる。りんも最近のドクタケ城の何もない日々に飽きていたところであるし、忍者の見習いとして「任務」という言葉は胸が踊る。この仕事は必ず成功させて見せると意気込んでおり、そのためには彼らの技術も必要だ。そう思いりんは快く協力すると言った。

三人は次の日の朝、その武家屋敷へ下女として潜入するのであった。



- 30 -

*前次#


ページ:





一覧へもどる