2


任務遂行当日、夕方前目的の武家屋敷にたどり着いたドクタケ研修生達は女装姿で正面の門を叩く。

その女装姿はりんが指導した・・・のだが、これがなかなかうまくいかない。特に化粧が苦手らしく皆厚化粧になってしまい、道化師にも見える出来映えであった。りんが化粧をするとうまく行くが彼らが行うとそうなってしまうのだ。

門番の男が門を開けるとその顔をみてひっと声をあげる。

「な、な、なんだお前たち!」
「こちらの求人を拝見して参りました。フブコです」
「シブコです」
「イブコでぇす」
「・・・シュンコです」

女装した三人は語尾を煩わしく上げて女の子らしく振る舞おうとするが門番からすると見た目と相まった話し方におぞましさが増し、背筋がぞっとするだけである。門番は気持ちが悪くなりながらもフブコ、イブコ、シブコに聞いてみる。

「バイト志望者か。お前たち、飯は炊けるか?掃除はできるか?」
「できますぅ!」
「では三人は家事をしてろ。くれぐれも会合の部屋には入るなよ。びっくりするから」

門番は改めてりんをみる。その整った顔立ちをまじまじと見た門番は頷いた。

「お前は御膳を運べ。主人に酌をしろ」
「え?わ、私は下女なのですが」

身分の低い下女が武士に酌などするのか、とりんは戸惑う。男は呆れたように言う。

「主人は女好きだからな。あんたみたいな美人には目がないんだ」
「び、美人?」
「くれぐれも主人には逆らうなよ?じゃないと新型の爆弾でひどい目に遭うからな。じゃ、仕事場に案内するからついてこい」

門番に連れられみんながやって来たのは厨房。そこには既に三人の下女が働いており、忙しそうに飯を作っていた。

「仕事はあの女達に聞いてくれ、じゃ、しっかり頼んだぞ」

そういってそそくさと去っていく門番。とりあえず、武家屋敷に潜入には成功したが・・・りんたちの目的はオニタケ忍者が開発した新型火薬の秘伝書だ。ここにしばらくいてそのありかを探らなければならない。

「あなた達、仕事教えてあげますから来てくださいよ・・・ってあれ!?」

飯の準備をしていた下女はドクたまをみて驚く。ドクたまも、彼女達をみてあっと声をあげた。

「ドクたま!」
「乱太郎、きり丸、しんべヱ!」

どうやらお互いに知り合いらしい。しかし呼びあった名前はどう考えても女性ではなかった。

「なんだ?知り合い?」
「うん。忍術学園の友達・・・っていうかライバル!三人ともなんでこんなとこにいるの?」

聞き覚えのある声に厨房にいた二人も顔を出す。

「オニタケ城の体験実習だよ。下働きに化けて護衛してるんだ」 

その言葉にしぶ鬼が笑う。

「三人に護衛ができるの?」

しぶ鬼の挑発にふん、と互いが睨み合う。横で一人のほほんとしたしんべヱが笑顔で話す。

「できるよー!オニタケ忍者の新型火薬を狙ってくる人がいるかもしれないからねっ!」
「あっ、ばか。護衛の内容をしゃべるなよ〜」

にやりと笑うドクたま達。忍術学園の三人はオニタケ忍術体験実習として、新型火薬を狙う曲者から女に化けて護衛をするようになっているらしい。そして自分達はその火薬のレシピを奪う任務を受けている・・・ということだ。

「ドクたま達はどーせ八方斎あたりにその新型火薬を奪えとか言うことを言われて来たんだろ?」
「そのとーり!」

きり丸の言葉に胸を張って頷くしぶ鬼達。そして視線はりんへと向けられた。

「で、あんたは誰だよ」
「ドクタケ研修生の春鬼!とっても賢くて強いんだぞ〜!」

りんをきり丸は観察する。そして予想はできたぜ、と腕を組んだ。

「ふーん、春鬼ねぇ。あんたもあのスケベじじいに気に入られたろ」
「す、スケベじじい!?」

その言葉にドクたま達はわっと反応する。りんはきり丸の言葉が理解できず、首をかしげた。

「あれ?会ってない?ここの武家屋敷にいる偉いおじさん、どーやらかなり色に弱くて可愛い女の子への声かけがしつこいんだよ。きりちゃんその人に気に入られちゃったみたいで・・・」

苦笑いして乱太郎が説明するとうへぇときり丸の顔が歪む。

「おっさんに、好かれても嬉しくないってぇの!」

ドクたまが改めてりんの姿を見直す。確かにいつも見慣れた彼らがみても目が奪われそうになるぐらいには女性らしく清らかにみえる。

「だ、大丈夫?春鬼?みんなこういってるけど」

いぶ鬼がりんの微妙にひきつったりんの表情を察して心配する。しかし彼女だってプロを目指す忍者。これは仕事だと割りきってしまえばそんなことも在ることは百も承知だ、・・・とりんはこの時は思っていた。

「大丈夫。新型火薬の為だ」

しかし納得しないのがしぶ鬼。彼にとってりんは大事な相棒の存在。それが変な中年男に触られるかもしれない・・・そう思うと無性に腹が立ってしまう。ぐぐっと拳を握ってなんとか自分を納得させようとしていた。

「しぶ鬼、なんか変だよ?」
「・・・もし、変なことされたら・・・危なくなったら僕を呼べよ!代わりに殴ってやるから!」
「しぶ鬼、まずいよそれは!」

既にいまにも飛び出しそうなしぶ鬼を止めている横できり丸は冷静に考える。

「でもなあ、オニタケって真面目ないい城だと思ってたけど、そんなバカなおっさんがいるのが、意外でさ・・・まぁ、それが城の現実なのかもな」

そんなことを話していると武士達の声が聞こえてくる。

「ここで話し込んでたら怪しまれちゃうよ!ごはんの支度、皆でやろう」

乱太郎の言葉でドクたま達もあわてて女性を取り繕う。りんも彼らに合わせて下女の仕事をするも、先程のきり丸の言葉が気になった。色に弱い男は弱点にもなる。しかし自分にうまくあしらえるかが、実は少し不安であった。



- 31 -

*前次#


ページ:





一覧へもどる