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りんはあえて彼らをみず、遠い山を見つめた。それはりんが本心でないとき、嘘をつくとき等によくする仕草であると、しぶ鬼にはわかった。

「今晩俺に任せてくれ。明日には爆弾のありかもわかるだろう」

りんはそういって下女の仕事にもどる。ドクたまや乱太郎達は春鬼頼りだと思っていたが、しぶ鬼だけは違った。春鬼はなにかうしろめたいことを考えている・・・今晩きっとなにかをするのだろう。

「しぶ鬼、どうしたの?顔が怖いよ」

いぶ鬼がそういうと我に返ったしぶ鬼は笑う。

「ごめんごめん。とりあえず僕達も屋敷の様子を探りながら過ごそう。最終的にはやつらの計画を阻止しなくちゃ」

気を取り直してしぶ鬼は言う。しかしこころのなかではりんの考えていることが気になって仕方がなかった。

──その日の深夜、りんとしぶ鬼は同じ部屋で横になっていた。下女という身分から、狭い部屋で木床の上にむしろを敷いただけの寝室。月明かりが窓からさす中、二人は女姿のまま互いに背中合わせになって寝ていた。しかし静かにりんは体を起こす。

「・・・」

できるだけ物音を立てず立ち上がる。開けっぱなしの戸の前に来て、りんはあの男の元へ行こうとしていた。任務、ドクタケのため、りんは爆弾の情報を手にするために男の誘いを受けることにしたのだ。

一歩、部屋を出ようと踏み出したときだった。

「どこいくんだ」

しぶ鬼の声がした。驚いて振り向くと、横になっていたしぶ鬼がゆっくりと起き上がり、部屋を出ていこうとするりんを見つめた。

「・・・調査をしにいくんだ。心配するな」
「また嘘をいってるな」

りんははっとした。しぶ鬼は自分の嘘に感づいている。

「・・・大丈夫だから」
「そんなに、僕頼りないかな」

しぶ鬼はぽつりと呟く。皆はりんが強いことを知っている。しかし彼女はいつも自分を気丈に振る舞おうと必死だ。彼はそれが気になっていた。自分だってりんの相棒として、相談してほしいし、頼ってほしいのだ。

「春鬼、話してくれよ・・・」
「しぶ鬼」

りんもそんな真剣なしぶ鬼の眼差しをうけて、戸惑う。誰かに頼ることなどまったく考えたことのないりん。なぜなら忍は他人を信じず己のみが味方であると里では言われ続けていたからだ。何年も前から言われ続けていた教えが、たった今しぶ鬼のまっすぐな瞳とそのせつなげな表情を受けて、胸の奥が苦しくなり崩れ落ちそうになった。

「・・・しぶ鬼には嘘はつけないね」

りんは彼の隣に戻り、座る。窓からこぼれる月明かりに、彼女の整った顔と華奢な身体がよりくっきりと浮かび上がる。

「・・・酌をしていてある男に言われたんだ。夜に自分の相手をすれば爆弾の話をしてやると」
「春鬼、それって・・・!」
「わかってるんだ。意味は」
「なら尚更いけないだろ!春鬼は男だし・・・それに僕はお前を」

しぶ鬼は言いかけて止める。今自分はなにを言いかけたのだろう。自分の気持ちがうまく言葉にできなく、戸惑う。

春鬼の事を考えると胸が熱くなる。そして絶対にあの男の元などへ行かせてなるものかと思った。

「とにかく行っちゃだめだ!」
「でもそれじゃ爆弾のありかがわからない」

しぶ鬼は考える。爆弾のありかがわかって春鬼も無事でいられる方法・・・するとある一つの手が浮かんだ。それをしぶ鬼が話すとりんは顔をひきつらせた。

「それ、無理じゃないか?」
「やってみなきゃわかんないだろ?今日みたいな月が出たり曇ったりする日がちょうどいい」

外をみると、確かに今は月が出てるが雲も多く、真っ暗になったり光が漏れたりする夜だ。それにどうしてもその方法で行くといって聞かないしぶ鬼に、りんは折れた。

「わかった。しぶ鬼、危なかったら退けよ」
「任せとけって!絶対にうまく行くからさ」

しぶ鬼は化粧をするために起き上がる。春鬼の為にもあの男をなんとかしてやろう・・・心のなかで心底彼はそう企んでいた。それをりんは見守る。化粧をするしぶ鬼の背中を眺めながら、りんは少しずつ自覚をしていった。自分は素直なしぶ鬼にとても弱い。気丈にしているつもりでも彼の前では自分も素直になってしまうのだと。

「でーきた!」

化粧を終えたしぶ鬼がりんに振り替える。そこにちょうど月明かりが落ちてきてりんはぎょっとした。

「こりゃ、魔界之小路先生も頭を抱えるな・・・」

陰影に余計不気味さを増してしまったしぶ鬼の化粧。りんのいった言葉は聞こえず、彼は着物を直し男のいる部屋へと向かっていったのだった。



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