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屋敷の総括をする男の部屋の戸が静かに開く。横になっていた彼はその気配に目を覚ましにやりとした。夕げの時、男は一人の下女に目が行った事を思い出す。ゲテモノの女たちが多い中で一人目を見張る見た目の女。凛とした振るまいがより男の下心を剥き出しにさせた。その女が自分の部屋に来たのだ。
男は起き上がる。ふっと辺りが真っ暗になった。雲が陰ったようだ。
「きたか」
「はい・・・失礼いたします」
すすっと女が入る音がする。その姿は女装したしぶ鬼。しかし真っ暗になってしまった今、こんな時間に訪ねてくるということは男は夕べの女が来たのだと、疑わなかった。
「遠慮するな、某の元へ寄れ」
「待ってください、約束しました。爆弾のことが私、心配で・・・」
爆弾のありかを知りたければ自分のもとに来いといったのは忘れていない。男は立ち上がり、部屋の物置の戸をあけた。暗い中それを取りだししぶ鬼の元へ持ってくる。
どうやら壺の中に詰めこんであるらしい。1つ持ち上げると丸い小型の火器のように思えた。
「爆弾は私の部屋にある。これで安心しただろう」
「っ!」
男はしぶ鬼の腕を掴み突然組み敷いた。突然の事に驚くしぶ鬼。男の下劣な笑いが彼の耳に煩わしく聞こえてくる。
「・・・お前、なんか身体大きいような」
「嫌ですわお侍様・・・私・・・」
できるだけかよわい女らしく振る舞うしぶ鬼。女と思って男を組み敷いた滑稽な男の姿ににやりと彼は笑う。その時、夜の雲に陰り隠れていた月が姿を現し、ぼんやりと辺りが照らされる。
男は自分がおそっている相手の顔をみて顔を蒼白した。そこには白粉をベッタリ塗り、真っ赤な紅に青いマスカラを塗りたくったお化けとみまごうほどの男がいた。
「ぎょえー!なんじゃお前は!!」
「やだ・・・冷たくしないで!」
ざざっとしぶ鬼のから距離を離れ壁にはりつく男。しぶ鬼は立ち上がり置いてあった爆弾を抱えた。
「あっ!貴様・・・それが狙いか!」
素早く側に置いてあった刀を抜く男。しかし視界も悪く、足元がもたついている。その男の隙をついてしぶ鬼は全力で前蹴りをした。
「ぐわ!」
「ざまーみろ色ボケおっさん!あばよ!」
捨て台詞を残し足早に去っていくしぶ鬼。男はしぶ鬼の攻撃を受けよろけながら立ち上がる。そして辺りにいる武士たちに聞こえるように声をあげた。
「あいつら、曲者だ!下女達を捕まえろ!」
その頃、りんとドクたま、乱太郎達は厨房の裏にある木々の影に忍び姿のまま隠れていた。真っ暗な外では目立たない忍装束でじっとしていれば気配はなかなかわからないものである。
急に騒がしくなった屋敷内。彼らはりんからしぶ鬼の話を聞き、心配してこうして遠くから様子をみていたのだ。数人の武士が刀をもって出てきたのを見て、しぶ鬼のことがわかってしまったのだと皆は察した。
「しぶ鬼見つかったみたい。どうする?」
乱太郎がりんに聞いてみる。りんはしぶ鬼が出ていく前に、何かあったらこの厨房で待ち合わせると約束していた。
「きっとしぶ鬼はここに来るはずだ」
「怪我とかしないといいけど」
ふっと彼らは黙り混む。数人の武士が灯りを持ち、厨房を横切った。
「新型爆弾が曲者に盗まれたらしい」
「それは大変だ・・・あれは恐ろしいものだからな」
「はやく始末しないとな」
そのまま遠退いていく武士たち。
その言葉に皆も不安になった。
その時、静かに近づいてくる気配を感じる。聞き覚えのある音が聞こえた。ドクたまの間で決めた矢羽音だった。
「誰か来る!」
それを知らない乱太郎、きり丸、しんべヱはやってきた気配に身を構える。
「僕だよ僕。皆居る?」
小さな声を聞いて皆はそれがしぶ鬼だとわかった。無事な様子の彼に皆はほっと息をつく。
「安心してもいられない。もうすぐあいつら厨房にくるよ!勝手口から僕たちが見えてしまうから、締めなくちゃ」
厨房には正面の入り口と裏に出る勝手口がある。急いで彼らは勝手口を閉めてその影に息を潜めた。最悪、鉢合わせてしまえば闘いになるかもしれない。
すぐに松明を持った複数の男たちがやって来て厨房の中へ入っていった。しぶ鬼はわずかに戸の隙間を開けて様子を窺う。そこにはしぶ鬼を襲おうとした男もいた。
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