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りんと竹高は堺へと続く山道を歩く。普段なら人の往き来が多い道であるのに、全く人影が見当たらない。その理由はりんや竹高にもわかっていた。

「りん、知っておるか?この道のこと」
「はい。噂には聞いております。最近野伏がでるとか」

野伏とは山道や野道で人を待ち伏せ、行く手を止めて相手の金品や物品を暴力で奪うもののことだ。賊と変わりはない。しかし噂の問題はその野伏についてだ。

「そうじゃ。大層かわりものらしい」
「ここは安全のため、迂回しますか?」

りんの提案に竹高は笑う。彼らは何か企んでいるようだった。

「余ははよう海が見たい。迂回はせんぞ。春鬼、野伏にあったらお前が退治するのじゃ」

「承知しました。お任せください」

りんは改めて野道を歩きながら竹高について考える。普段は張り子の馬にのって走り回る変わり者の一面があり、子供のようにわがままな性格であるドクタケ城の大名。しかしその表情は時として誰一人読み取ることができず、普段どんな思案をしているのか、りんもわからなかった。

変わり者の野伏と出会ったら戦えと言う彼の命令も、必ずしもりんが退治できると言う確証はなかった。ただ、何かあれば命がけで竹高を守ると言う任務だけがりんにとって、今最優先すべきものだ。

少し進むと遠くから声が聞こえる。男の声だ。二人がさらに進んでいくとその声が大きくなっていく。吠えるような、荒い声だった。

「おい、そこの二人!俺と勝負をしろぉぉ!」

りんと竹高は噂通りだと察した。
その野伏というのは、道をふさぎ、金銭や物品を奪うわけではなく、道行く人に戦いを挑むというものだった。勝ち負け関係なく、勝負が終われば通してくれるらしい。しかし、女性や年寄りにも戦いを申し込むので辺りは困っている。

大柄の男は着古した着物を崩して半裸姿、太刀を剥き出しにしてぎらぎらした眼差しを向けてくる。

「ここを通りたいならおれと戦え」
「・・・小竹様、お下がりください。私が相手になります」

竹高を後ろにやりりんが前に出る。刀を静かに抜き、構える。自分よりはるかに大きな人物との戦い方はある程度心得ている。こちらが体勢を整えると男は構えもせず獅子のように突進してきた。

「!」

その野伏の刀を受け止める。足もとががずずずと音をたてて体が押されていく。そのまま力を受け流し体をひるがえした。男の体は崩れ背中が無防備になるが、りんはあえて攻めずに男が向き直るのを待った。彼は怪訝な顔をした。

「お前・・・なぜ切り込まない?」
「相手の隙をつけこむような卑怯な手を使って勝ちたくない」

男がにやりと笑う。

「小僧、俺と一緒だな」

何度も刀を打ち込み、鍔迫り合いを続ける二人。りんは相手の動きが鈍くなったのを感じた。なにをするにも全力で斬りかかるため、力の消耗がはげしいのだ。もう一度、刀を交える。その力が弱まった瞬間をりんは逃さなかった。

「えいっ!」

刀を弾き素早く構えを変えて男の頭に切っ先を向けたところで寸止めをする。男は身動きできず負けを悟る。 

「・・・俺の負けだな。満足した。とおっていいぞ」

男は太刀を下げて降参する。離れてみていた竹高が小さく拍手をして戻ってきた。

「まっこと見事であった春鬼。噂通りの強さじゃ」
「ありがとうございます」

りんが頭を下げると竹高は野伏へ話しかける。

「お主、なぜここで野伏をしておる?」
「俺は元は農民だが、昔から刀の勝負がすきでな。いろんなやつと戦いたいんだ。今じゃ浮浪をしながらこんなことをしている」

ほほぉと竹高が嬉しそうな表情を浮かべる。

「余も戦いは好きである。先程の戦い、獅子のような勇ましい姿、気に入った!余の家来にならんか?」
「た、竹高さま、野伏を家来に?」 

りんは驚き、つい竹高の名を発してしまう。それを聞いた野伏は顔の表情を変えた。

「竹高・・・?あんたもしかしてドクタケ城城主の木野小次郎竹高か?」
「いかにも」

男はそれを聞いて悩むように唸る。ドクタケか、と呟いた。

「俺は戦う事は大好きであるがドクタケのような卑怯な手をつかう奴は大嫌いだ・・・しかし」

そうしてりんを見やる。男は決心したように頷いた。

「そこの正直な小僧が、俺は気に入ったぜ!あんたの誘いに乗ってやろうじゃないか」
「こら、家来になるならこのお方を竹高様と呼びなさい・・・!」
「構わぬ。余は強い者も好きである。ドクタケ城に来られよ。ほれ、余の紹介状じゃ」

竹高は懐から小さな紙を取りだし携帯の筆を用意しその場で紹介状をつくる。男はそれを受け取り、ドクタケ城へと向かっていった。

「しかしお主もなかなかやりおるな」
「私が何かしましたか?」
「まことに正々堂々としている。ドクタケ忍者隊に春鬼がいると、なかなかおもしろそうであるな」
「?」

上機嫌で竹高は進んでいく。りんはその意味を理解できずにいた。やはりこの木野小次郎竹高と言う男は、何を考えているか、わからない。




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