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「おぉっ!海じゃ海じゃ〜!」
りん、竹高、滝夜叉丸がたどり着いたのはうどん屋の先にあった堺の都。海が広がり外国との交易も行われている町で、人の通りもとても賑やかだ。
竹高は念願であった海がみれて嬉しそうだが、隣にいる滝夜叉丸の顔は浮かない。
「なぜ私がドクタケなどと共に行動しているんだろう・・・」
「貴方、忍者として活躍したいんでしょう?なら今の仕事を成功させねばなりませんから」
「わかってはいるんだ・・・」
今回の目的は竹高を海につれていくことと、おまけにこの滝夜叉丸のうどん屋を立て直すことだ。しかし堺にはお互い知り合いなどはいない。りんも普通のうどんなら作れるが、それでは仕事には結果がでないだろう。
「やはりここはまず偵察ですね」
「なにを偵察するんだ?」
滝夜叉丸の質問にりんは真顔で答える。
「うどん屋です。堺で一番繁盛しているうどん屋の偵察、そしてお話をうかがうのです」
「のう春鬼─」
りんは滝夜叉丸に説明することに集中しており、後ろで海をみてはしゃぎ疲れた竹高の声かけに気づかない。
「滝夜叉丸さん、ここで大事なのは貴方の態度です。どうか謙虚な態度で店主にご教授を得るのです」
「春鬼〜!」
後ろ手くいくいと袖をひっぱる竹高をりんは邪険そうに振り返る。
「小竹さま、なんです?今滝夜叉丸さんに大事なことを伝えているんですが」
「す、すまん・・・」
「二人とも関係が逆転しているぞ」
部下に言われて怒るどころかしょぼんとしている竹高に、ついいつもドクたまに接しているようにしてしまったと慌てる。
「小竹さま、大変なご無礼をいたしました。いかがなさいましたか?」
竹高は頷き港の近くに建つ一件の平屋を指差す。
「うむ。その偵察のうどん屋のことだが、あちらの店はどうじゃ?」
そこには桃色ののれんがかかっており「うどん」と書かれてあった。入り口から大勢の人が並んでおり、見るからに繁盛している。
「よいと思います。すこしのぞいてみましょう」
「はぁ。本当にうどんを作るのかぁ?あまりやる気ではないんだが・・・」
三人は並んで店にはいれるまで待つ。普段店に並んだことなどない竹高は少しワクワクしている様子だ。こんなところにあの悪の代表、ドクタケ城の城主がいるなど皆考えもしないだろうなと思う。
「いらっしゃい!3人かい?」
ちょうど人の入りもピークが過ぎたようで今の時間、お客は自分達で最後のようだった。威勢のよい店主は笑顔で三人を迎える。
「あの店主より私の方が美しいではないか。なぜ繁盛しているのかわからんな」
滝夜叉丸は謎の憂いのポーズをしながらそんなことを言っている。
「そーゆーところです!もっと謙虚な態度でお願いします」
席に座り早速品書きを三人で見つめる。素うどん、山菜うどん、天ぷらうどん・・・と一見して普通の品数である。品定めしていると店主が茶を持ってやってきた。
「ここは随分繁盛しておるの。店主よ」
竹高が茶を飲みながら店主に何気なく聞く。店主はにこりと爽やかに笑い答える。
「えぇ。私はあの『伝説のうどん職人』に弟子入りした者なのですよ。味には自身があります」
「伝説のうどん職人だって?」
堺に来てはじめて聞く言葉である。滝夜叉丸もその人物は知らないらしい。
「そんな方がいるのですか?」
「はい。その方はふらりと堺にやって来てひとつのうどんの屋台をはじめて瞬く間に大行列!堺の町は彼の話題で持ちきりだったんです」
りんはその店主の話に身を乗り出す。是非ともその人物に合ってうどん作りを教わりたい。そう思ったのである。滝夜叉丸も伝説と聞いて興味があるようで、その店主の話を黙って聞いていた。
「その人にどうやったら会えますか?」
すると店主は難しそうな顔をする。聞けば彼はさすらいの者。いわゆる浮浪者であるらしく、うどん屋も金を稼ぐために気まぐれに行っていたらしい。もうすでに堺を旅立っているかもしれないと店主は言った。
「あーあ、せっかくうどん屋のヒントが得られると思ったのに・・・」
りんががっかりしていると、うどん屋から一人の客が入ってきた。
「吾作、どうだい?うどん作りの調子は」
「あーっ!」
その客はまだ若く、ぼろの服を着ており腰に刀を携えていた。その姿をみた店主はあっと驚いた。
「雅門さん!まだ堺にいらしてたのですか?」
三人はその二人を黙ってみている。するとうどん屋の店主は焦ったようにりんに向き直る。
「ほら、雅門さんだよ!」
「どなた?」
「さっき話した伝説のうどん屋だよっ!」
その言葉を聞いてりんと滝夜叉丸は驚く。みたところ男は刀を持っているし体つきも逞しい。普通の人は彼を武人と思うかもしれない。
「どうも。なんだ俺を探してたのか・・・っ!?」
竹高は黙って顔を上げる。雅門と目が合うと薄ら笑いを浮かべた。竹高の気配が変わったと察したりんと滝夜叉丸は竹高を見ていた。
「久方ぶりよの。雅門」
その声を聞くやいなや雅門は素早くその店を出て走り去る。三人は立ち上がると竹高がりんに指示をした。
「春鬼!やつを捕まえろ!」
「はい!」
りんはなぜ二人が顔見知りなのかなど、事情はわからなかったが竹高の命令であらばと即座に駆ける。表を出るとちょうど川にかかる橋を渡ろうとしていた。りんは懐に納めている縄を手にする。全力で走り彼の背中が近くなると思いきりその縄を飛ばした。
「うわっ!」
その縄は男の右足にかかり思い切りこけた。その間にりんは男の側により羽交い絞めにする。
後ろからは滝と竹高が追いかけてきていた。雅門は抵抗するのをあきらめてその場に座り込む。
りんはなぜ彼と竹高が顔見知りなのか、どうして逃げたのかが気になっていた。
「く…こんなところに竹高様がいるなんて…」
「なぜ逃げるのですか?」
「それはな…」
代わりに答えるように竹高が雅門の前に立ち言い放った。
「こやつは裏切り者であるからだ」
「裏切り者?もしかしてドクタケ…」
滝が言いかけて辺りを見る。周りは何事かと橋に人が集まりはじめていた。ここではまずいと思いとっさに
口をつむぎ、雅門を起き上がらせる。彼もこれ以上逃げる気がないようでおとなしく立ち上がった。
「ここでは誰が聞いているかわからん…。私のうどん屋敷にもどるのはどうだろう?」
「そうですね。…小竹様よいですか?」
竹高は静かに頷く。三人はいったん雅門を連れて滝のうどん屋へと戻ることにした。
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