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りんが朝食を終え自室にもどるとしぶ鬼、いぶ鬼、しぶ鬼がなぜが集まっていた。
彼らはりんが戻ってくるや否や、どこからともなくお茶を出してきた。その三人の顔は妙に笑っており気味が悪い。

「おはようございます!春鬼さん!」
「お、おはよう。皆・・・どうしたの。三人揃って」

ふぶ鬼がさっと後ろにまわってりんをその場に座らせる。すかさずいぶ鬼が床にふかふかの座布団を寄せてきた。あきらかにいつもと態度が違う三人にりんは不気味がった。

「いや〜僕たち、研修をしててすっかり春鬼のファンになっちゃってさぁ!」
「おもてなしだよおもてなし!」

りんは肩をもみはじめたふぶ鬼の手を払う。お茶を注ごうとするしぶ鬼を止めて座布団をどけた。
あきらかに三人の様子はおかしい。普段は自分達は対等の関係であったはず。いきなり下手にでるなどなにか考えてるに違いないと思った。

「やめろよ。そんな間柄でもないだろ。なにが目的なんだ」
「えっ・・・目的なんてないですよぉ」
「怒らないから言ってみろって。なにしてほしいんだ?」

りんの問い詰めに彼らは作戦通りだとひそかに目を合わす。
しぶ鬼がじゃぁ、とおずおずと言った。

「僕たち、春鬼に稽古をつけてもらいたいんだよね。剣術の」
「・・・剣術?なんだよ、そんなことでいいのか?でも、俺もそんなにうまくないよ?」

その言葉にいぶ鬼が首をぶんぶんと振った。

「春鬼はあの金吾と対等にやりあったじゃないか。魔界之小路先生、剣術はあんまり得意じゃないみたいでさぁ、いまいちわからないことも多いんだよね。春鬼、教えてよ〜」
「僕も!初日に春鬼に負けたとき、まったく歯がたたなかったし」

いぶ鬼、ふぶ鬼はそういって頭を下げてくる。慌てたりんは二人に顔をあげるように言った。自分が教えるほど剣術がうまいとは思えないが、彼らがそこまで言うならしょうがない。昼の研修までまだ時間があるのでその間、稽古をすることになった。

場所は変わり、ドクタケ城の稽古場。ひろい地が広がるだけの場所はよく火縄銃や馬術などの稽古に使われているところだ。そこで待っていたのは山ぶ鬼だった。

「やっほー春鬼くん」
「山ぶ鬼まで・・・。なんでここに?」
「えへへ。なんとなく・・・ほら、春鬼くん剣の稽古をしてもらうんでしょ?木刀持ってきたから!はい」

なぜ今あったばかりの山ぶ鬼が剣の稽古を知っているのだろうか。考えるまもなく三人はそれぞれ木刀を持ち、りんにも木刀を渡した。よくわからないがとりあえずかれらに稽古をすれば満足するだろうと、りんは構える。

「とりあえず、打ち込んでいかないか?誰からでもいいよ」

りんの言葉に始めに名乗ったのはいぶ鬼。りんは木刀を構えたいぶ鬼をみる。彼はあの剣術の手練れである金吾の友人だ。おそらく彼との交流のなかで剣術の練習はしているはず。油断はできないとりんも気を引き締める。

「えい!」

なんどか打ち合い、間合いをとる。しかし、打ち合う音が妙に納得できない。りんはその打ち込みが手抜きのように感じられたのだ。まさか三人から剣術の稽古をお願いしてくるぐらいなので手抜きなどはありえないはずだ。

「やぁ!」

振りかざしてきた木刀をなんなく払い除け、弾いて身動きのとれないいぶ鬼の胸にぐいと木刀の剣先をむける。

「わっ!降参!」
「・・・なにいってるんだ。まだいけるだろ?」

いぶ鬼はその場にへたりつく。

「無理!やっぱり春鬼には敵わないよ〜」

そんないぶ鬼の言葉を聞いて離れて見ていた山ぶ鬼が黄色い声をあげる。

「きゃぁ!春鬼くん素敵ー!」
「次僕が相手だ!」

ふぶ鬼が立ち上がりりんの前に立つ。その構えからしてやはり気合いが入っていない。打ち合いは相手に押されないように構えるのが基本であるというのに彼はほとんど棒立ちのように見えた。

「ふぶ鬼からきなよ」
「よしっ」

同じように何度か打ち合い、けさ斬りでふぶ鬼の木刀を払いのける。あまりの手応えのなさにりんはため息をついた。

「どうしたんだよ。初日の方が気合い入ってたぞ?」
「いやぁ、春鬼が強すぎるんだよ〜さすが優秀なドクタケ研修生!」

負けたと言うのに彼らは笑っているのがさらに不気味だ。しぶ鬼は先程からなぜか黙っていた。りんと目が合うと持っていた木刀を構えもせず降ろしていた。

「しぶ鬼はいいの?」
「い、いや。やるよ」

しぶ鬼はりんが少し苛立っていることを感じていた。自分達の様子がおかしいことと何か隠し事をしていることに気づいている。それが嫌なのだろう。

(でも、それは春鬼だってそうだろ・・・)

春鬼は何か事情があってドクタケにきている。それは信頼しあっている自分達にも言えないことなのだ。りんはいつか告げると言ったが、研修も終わりに近いと言うのに、まだなにも言わないことがしぶ鬼も不満になっていた。

「やぁ!」

そんなことを考えている間に、しぶ鬼の木刀が空へ飛んでいく。りんの一撃に耐えられず、木刀は高く上がり、からりと地面に落ちた。

「たはは、敵わないや・・・」
「・・・・・・」

空笑いをするしぶ鬼の顔を見て、りんはついに怒ってしまう。

「剣の稽古してほしいんじゃないのか」
「春鬼、なに怒ってんの。お前が強いことはいいことだろ?」

しぶ鬼がりんの目をそらして言う。その態度がますます気にくわないと眉間にシワを寄せるりん。

「お前たちも強くなりたいんだろ?」

横で見ていたいぶ鬼、ふぶ鬼にりんは問いかける。しかし彼らはしぶ鬼と同じく、本心を隠してお世辞を言っているようにみえた。

「いやぁそれでも春鬼には敵わないよぉ〜」
「そうそう。やっぱり僕たちには君がいないと!」

りんは黙りこむ。皆は自分に何かを隠しておべっかをつかっていることに、りんは悲しくなった。今まで思ったことはなんでも言い合ってきたのに、なぜそんな態度を取るのだろう。
それを見ていた山ぶ鬼ははたとその心情に気づき、りんのそばに駆け寄った。

「あのね、違うの。私達企んでる訳じゃなくて、春鬼くんをね・・・」

理由をいいかけたしぶ鬼が山ぶ鬼を止める。

「いいよ山ぶ鬼!・・・なんだよ春鬼も勝手に怒ってさ!自分のこと言えるのかよ」
「・・・なんだって?」



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